自筆で書いた「遺言書」の本文やワープロで書いた目録は「加除・訂正」できますか

自筆で書いた遺言書のことを「自筆証書遺言」と言います。自分が亡くなった後の相続手続が円滑に実施できるように遺言書の作成を検討される方が増えています。その場合、費用もかからず簡単にできる自筆証書遺言を考えている方も多いと思います。

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付及び氏名を自署して、印を押さなければなりません。但し、平成31年1月15日以降に作成する遺言については、民法の改正によって、相続財産の全部又は一部の「目録」を「添付する」場合には、その目録はワープロなどで作成して印刷したものや、登記事項証明書・預金通帳のコピー等でも良いことになりました。

印刷した目録を添付する場合には、目録の各ページに遺言者が署名して印を押さなければなりません。目録の書式は定めがありませんので、自由な形式で記載して問題ないことになります。


目録をワープロなどで作成した場合、記載ミスに気が付けばこれを修正して再度印刷すれば済みます。しかし、本文は自署しているため修正方法が分からなければ、もう一度全文の書き直しになります。簡単な遺言内容であれば書き直せば良いのですが、ある程度の長文であると高齢の遺言者にとっては大変な作業となります。

遺言書は厳格な要式行為となっているため、加除訂正も方法を誤ると加除訂正が認められない場合があります。本文が書き直してある場合、本人以外の偽造・変造の可能性を含め、その意味内容を巡ってもめることになります。遺言を書いた本人は既に亡くなっているため真意を確認することができません。間違っても修正テープなどで訂正をしてはいけません。なお、印は実印でも認印でも良いのですが、実印を使用した方が本人の明確な意思を表す意味で望ましいと思います。

そこで、今回は自筆証書遺言の加除訂正方法について見て行きます。


( 自筆証書遺言「本文」の加除訂正方法  )

自筆証書遺言を加除訂正するには、「付記・署名・押印」が必要とされています。自筆証書遺言の加除訂正は方式が厳格になっています。残された遺言書の文章の解釈において疑義が出ないようにするためです。

しかし、「付記・署名・押印」が必要と分っていても実際の記載見本などがないと書き方が良く分からず不安になります。そこで、典型的な遺言書の加除訂正の見本を次に示します。

遺言書本文の加除訂正方法です。


加除訂正箇所に訂正線を引いて、その下 ( 又は上 ) に正しい文字を書きます。そして、印を押します。遺言書の余白に加除訂正した旨を文字数を含めて記載し氏名を自署します。
 

 


次に財産「目録」について見てみます。目録はパソコンやワープロなどで明細を作成できます。作成した目録は、遺言書本文に別紙目録として「添付」します。添付ですから、遺言書本文と同じ紙に書くことはできません。別の用紙に記載して添付します。用紙の余白に氏名を自署して印を押します。添付する各ページ全てに署名捺印します。

目録は遺言書本文の用紙とホチキス止めをして契印をしておくと良いでしょう。契印は必須ではありませんが、遺言書本文との一体性が確認できなければ添付とは言えませんので注意が必要です。

遺言書本文と目録を同一の封筒に入れて封印をしておくか遺言書の用紙に通番 (ページ番号) などを付けておくなどの工夫をすれば、ホチキス止めと契印は不要と思われますが、ホチキス止めで契印をしておいた方が安心だと思います。

尚、ホチキス止めと契印を施した目録をホチキスを外して訂正後のものと差し替えることは避けるべきです。ホチキすの穴の跡や契印の位置が僅かにずれていれば、偽造変造などの疑いを持たれます。


不動産の別紙目録の見本です。( 加除訂正は発生していません。)


次にパソコンやワープロで書いた別紙目録の加除訂正の見本です。


ここでは、会社名の株式会社の位置を前後で間違えていたケースです。パソコンやワープロで書かれている場合も本文と同じように加除訂正します。

もちろん、パソコンやワープロで作成しているので簡単に修正と再印刷ができます。修正版を差し替えれば良いのですが、遺言書本文とホチキス止めをして契印処理を施してあると難しくなります。その場合は、この方法によることになります。

今回は、挿入のケースです。挿入の記号を書いて挿入文字を追加します。抹消する文字は抹消線を引きます。それぞれの箇所に印を押します。別紙目録の余白に加除訂正した旨を文字数を含めて記載し氏名を自署します。

遺言書を書く人


(まとめ)

今回は自筆証書遺言の加除訂正について見てみました。世の中にある遺言書には実にさまざまに書かれているものがあります。今回説明した方法で正しく訂正してるものばかりではありません。

厳格な訂正方法がされていないからといって直ちに遺言書が無効になるわけではありません。全ての相続人が訂正内容に納得できるのであれば、訂正後の内容としての遺言書として取り扱えばよいと思います。

しかし、納得できない相続人がいれば争いになり裁判所による決着となります。また、不動産については法務局(登記所)が、預貯金などについては各金融機関が遺言書の訂正を認めなければ相続手続に支障をきたします。

そのため、自筆証書の加除訂正は法の趣旨に沿った厳格な要式を充足しておくことが必要になります。

 

Follow me!