「内縁の妻」に自分が亡くなった後の「自宅の居住権」を確保したいと考えていますがどうしたら良いですか

先妻が亡くなってから後妻と事実婚を開始することがあります。自分の子供達に対する関係で入籍することが難しい場合です。特に、自分が亡くなった後の相続のことを考えると入籍には二の足を踏む場合です。

しかし、内縁の妻とは今後自分が亡くなるまで生活するわけですから、自分が亡くなった後の住むところの確保は図ってやりたいと考えると思います。

今回は、このような状況で「内縁の妻に自宅の居住権の確保」をどのようにしたら良いかについて考えてみます。


(「配偶者居自由権」の設定 )

近年の民法の改正によって配偶者の自宅の居住権確保の手段として「配偶者居住権」という制度が開始されています。遺言書や遺産分割協議の中で配偶者に自宅の居住権を確保できるようにする制度です。居住期間は配偶者が亡くなるまで確保することができます。

しかし、この制度は法律上の妻にしか認められていません。そのため今回の内縁の妻には配偶者居住権の適用はできないことになります。


( 「遺贈」または「死因贈与契約」 )

内縁の妻に自宅を相続させる方法としては、遺言書の作成による方法 (「遺贈」) と死因贈与契約による方法があります。どちらも自宅の所有権を内縁の妻に相続させるものです。死因贈与契約は亡くなったときに効力の生じる贈与契約です。

死因贈与契約は、その性質に反しない限り、遺贈に関する民法の規定を準用することとなっています。つまり、両者はよく似たものということができます。但し、違いもありますので注意が必要です。

「遺贈」は遺言書で「自宅を内縁の妻に遺贈する。」と記載して行います。遺言書は夫が1人で作成します。作成にあたって内縁の妻の関与は不要です。遺言書を作成した後、気が変わった場合は、夫は作成した遺言書の内容を変更したり破棄したりすることもできます。

但し、遺言書に書かれた内容について夫の生前に名義変更の登記をすることはできません。遺言書は夫が亡くなったときに効力が発生するので、夫の生前に不動産の名義を内縁の妻名義に移すことはできません。仮登記によって保全しておくこともできません。


一方の「死因贈与契約」は、契約ですので、夫と内縁の妻が契約書を作成して行います。死因贈与契約は当事者双方が合意した契約ですので一方が勝手に取り消したりすることはできません。

また、死因贈与契約は、夫の生前に不動産の名義を妻名義に「仮登記」することができます。仮登記とは、正式の本登記の順位を保全しておくための登記です。不動産の登記では登記した「順序」(順位) が絶対的に重要になります。先に登記した者が勝ちとなります。そのため、将来の夫の死亡を待たずに現時点において登記の順位を仮登記によって確保しておくのです。

仮登記しておけば、仮登記後になされた色々な登記(本登記)に対しても仮登記した時の順位を主張することができます。つまり、仮登記しておけば、自宅の所有権は確保されるということになります。

次に、遺贈も死因贈与契約もその定めの中で「執行者」を定めておくことが大切です。遺贈の場合は遺言書の中で「遺言執行者」を定めておきます。死因贈与契約の場合も契約書の中で「死因贈与執行者」を定めておきます。どちらも内縁の妻を執行者に指定しておくことが大切です。

執行者の定めがなければ、夫が亡くなってからの遺贈の執行や死因贈与契約の執行は、内縁の妻と夫の相続人との間で行う必要があります。執行者を内縁の妻と定めておけば、内縁の妻が一人で行うことができます。

以上の遺贈と死因贈与契約の違いを認識したうえで選択する必要があります。


( 遺留分への配慮 )

内縁の妻に自宅を遺贈又は死因贈与する場合、自宅の資産価値によっては、他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。夫の前妻との子は夫の相続人となりますので、遺贈や死因贈与によって内縁の妻に財産を与えた場合、これら相続人に対する遺留分侵害の可能性があります。

これら相続人から請求がなければ問題ないのですが、遺留分請求があった場合はこれに応じる必要があります。必要な遺留分額を計算して現金で支払う必要があります。

亡くなった夫の自宅以外の相続財産は夫の子らの相続財産となりますので、これで支払うことはできません。他の相続人からの遺留分請求に対応できるように、夫の生前に内縁の妻を受取人とする「生命保険」を掛けておくことも対策の1つとなります。

内縁の妻の今後の生活費や遺留分への対応費用として必要な額を死亡保険金額として契約しておくのです。何も対策を取らなければ、内縁の妻に手元資金がない場合は、自宅を売却して資金化する必要に迫られます。

なお、生命保険金は亡くなった夫の相続財産ではありませんので、受取人である内縁の妻が自由に使うことができます。遺留分の額は亡き夫の相続財産の合計金額を基に算定されますが、死亡保険金は遺留分を算定する相続財産に含まれません。また、死亡保険金は保険会社によって比較的スピーディに支払われますので安心です。


( 自宅を取得したことによる課税関係 )

遺贈や死因贈与によって不動産を取得すれば各種税金が課税されます。まず、亡くなった夫の相続財産の総額が非課税限度額以上であれば「相続税」が課税されます。遺贈や死因贈与契約によって不動産を取得した場合も相続税が課税されます。

内縁の妻は亡くなった夫の相続人ではありませんので、相続税の額は通常支払額の1.2倍となりますので注意が必要てす。(相続人以外は「2割増し」)

また、「不動産取得税」は相続人への相続の場合は非課税ですが、内縁の妻の場合は相続人以外の取得となるので固定資産税評価額の4% が必要なります。また、不動産登記の名義変更に必要な登録免許税も相続人の場合は固定資産税評価額の4/1000ですが、相続人以外の場合は20/1000が必要になります。

不動産の固定資産税評価額が高額の場合は、これらの税金の額も高額になる場合があるので注意が必要です。


( まとめ )

妻に先立たれて再婚するシニアの方が増えているとのことです。シニア向けの婚活サービスも盛況のようです。しかし、シニアの再婚は当人だけの問題ではなく、色々な課題があるため簡単にはいかない場合があります。

相続問題が絡んでくるため、今回の話のように事実婚を選択するケースも多いと思います。しかし、事実婚であっても晩年に連れ添った配偶者について自分が亡くなった後のことが心配になります。

そこで、内縁の妻あての自宅などの財産の分与の問題を考えることになります。今回の事例なども参考にして色々と検討してもらいたいと思います。

これ以外にも色々いなアイデアがあると思いますので、相続を専門とする司法書士や弁護士などの専門家に相談してみて下さい。良いアドバイスが頂けると思います。

 

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