遺産分割するとき土地の価格はどのように評価したら良いですか

相続が発生し相続人による遺産分割協議を行う場合、各遺産の価格評価を行う必要があります。中でも土地については金額が大きくなる場合があるため、価格の決め方によっては不公平な遺産の分割となる場合があります。

遺産分割協議を行う場合、各遺産の価格の評価方法には決まった方法はありません。相続人全てが納得できるのであればどのように決めても良いことになります。預貯金などの金融資産であれば額面金額などがあるため比較的簡単に金銭評価をすることができます。株式等の投機性のあるものでも亡くなった時点の相場価格を基準に金銭評価することが可能です。

しかし、土地については何となくは価格評価できるものの各相続人の納得性のある方法となるとどのようにしたら良いか迷うことになります。そこで、今回は土地の評価方法について考えて見たいと思います。


( 不動産の評価の公的基準 )

不動産の価格には色々な評価の基準があり迷ってしまいます。土地の価格に関する公的な4つの基準について順に見て行きます。

(1) 公示地価 ( 地価公示価格 )

公示地価とは、国土交通省の土地鑑定委員会が特定の標準地について毎年1月1日を基準日にして公示する価格です。国土交通省のホームページの「土地総合情報システム」で誰でも簡単に見ることができます。

2人以上の不動産鑑定士が鑑定して決定します。毎年3月中旬頃に公表されます。評価の範囲は都市計画区域内となっています。都市計画区域外でも不動産取引が行われると予想される土地については鑑定が行われます。

公示地価は、一般の土地取引価格に対する指標となることを目的にしているため非常に参考になるものです。公共事業のための土地買収時には、公示価格を基準にして取得価格が算定されます。


(2) 基準地価 ( 地価調査標準価格 )

基準地価とは、都道府県知事が国土利用計画法施行令に基づき特定の基準地について毎年7月1日を基準日として公表している価格です。こちらも国土交通省のホームページの「土地総合情報システム」から見ることができます。

1人以上の不動産鑑定士が鑑定して決定します。毎年9月20日頃に公表されます。評価の範囲は公示地価より広く都市計画区域以外の土地も対象に含まれます。そのため山林などの評価に向いていることになります。

(3) 固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、「土地家屋台帳等に登録された基準年度の価格または比準価格」です。固定資産税・都市計画税などの基準として利用され、3年に1度評価替えがあります。

土地の固定資産税評価額は、公示地価の70%を目安に設定されていると言われています。そのため、固定資産税評価額が分かれば0.7で割り戻す( 固定資産税評価額÷0.7 )で公示地価を計算することができます。

但し、公示地価の変動が大きい場合は、割り戻し計算ではなく時点修正が必要になります。固定資産税評価額は3年に1度しか評価替えを行っていないため、3年の途中での評価ではブレが生じるからです。

建物のの相続税の評価額や相続登記に必要な登録免許税の評価額の基準としても使用されます。


(4) 相続税評価額 ( 路線価)

相続税評価額は、相続税・贈与税を算出するために「国税庁が定める評価基準により算出される価格」です。財産評価基準通達に基づき、路線価方式または倍率方式で算定されます。路線価図が整備されている都市部では路線価方式、整備されていない田舎の土地については倍率方式で評価されます。毎年1月1日を基準日として、全国一律の画一的な基準価格として国税庁から公表されます。

土地の路線価は、公示地価の80%を目安に設定されていると言われています。そのため、路線価が分かれば0.8で割り戻す( 路線価÷0.8 )で公示地価を計算することができます。但し、地価変動が激しい時は、実勢価格と路線価が乖離する可能性があるため慎重に見極める必要があります。

また、実際に相続税などを納める場合は、路線価を単純に適用するのではなく土地の形状や周りの状況によっては一定の補正をする必要があります。


( 遺産分割時にはどれを採用したら良いか )

相続人の間で土地の評価については客観性のあるものを使用したいとの希望がある場合、何を基準にしたら良いか迷うことになります。公的な基準は説明しましたが、それぞれには特徴があり一長一短となっています。

土地取引の実勢価格に近いものは公示地価や基準地価です。不動産業者などは公示価格や基準地価を参考にして、これの1.1倍程度増やした価格で初回の売買公告を出すケースが多いと思います。その意味で亡くなった時点に近い公示地価や基準地価を採用するメリットはあります。

但し、公示地価や基準地価は標準地や基準地に関する価格です。亡くなった方の所有する土地が標準地や基準地であれば問題ないのですが、それは滅多にないことなので直接的に適用することができないことになります。近隣の土地の参考値として活用することになります。

それに対して、固定資産税評価額や路線価はなくなった方の土地に関する評価額です。その意味で使い勝手が良いと思います。

遺産分割協議で使用する基準としては固定資産税評価額や路線価が使い勝手が良いことになります。固定資産税評価額や路線価を直接使用するか一定の割り戻し計算を行って実勢価格に近い価格として使用するかは相続人が決めればよいと思います。

私の個人的な意見としては、割り戻さずに路線価で評価した方が良いと思います。実勢価格は計算上は算出できますが、本当にその価格で売れる保証はなく、また通常は自宅などとして今後も使用していく土地であるので実勢価格から2割程度減額されている路線価で評価した方が公平性を保てると思います。

いづれにしても、判断は相続人が選択して決めることになります。

相続人間で揉めるようなことがあれば、「不動産鑑定士による鑑定評価 」を依頼することになります。自宅などの土地でもめる事は少ないと思いますが、賃貸マンションなどの収益物件の相続の場合は、マンションの評価額を巡ってもめる場合があります。そのような場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要になるかもしれません。

不動産鑑定士の鑑定評価を依頼する場合は、事前に相続人に対して不動産鑑定士の評価を受け入れる旨の「念書」を取っておくことが必要になります。費用をかけて依頼した鑑定評価の結果が気に入らないからといって再度の鑑定評価を依頼していては決着が付かなくなるからです。


(まとめ)

相続財産に不動産がある場合、相続人の誰か ( 例えば長男 ) が相続しておわりという時代ではなくなってきています。不動産を相続しなかった相続人としては、不動産に代わる相続財産として、不動産を相続した相続人から「代償金」を受け取りたいという希望がでてきます。

代償金を算定する上でも不動産の価格をどのように決めるのかは重要なポイントとなります。今回の話も参考にして土地の価格を検討してもらいたいと思います。

もちろん、何ももめていない場合は相続人の合意でどのように決めて頂いても良いので土地の評価うんぬんを議論する必要はないかもしれません。

 

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