相続手続前の亡き親名義の不動産が「倒壊の危険」があるときどうしたら良いですか

親が亡くなり親名義の自宅や工場などが老朽化のため倒壊しそうな場合があります。倒壊の危険がない場合でもトタン板で覆われた自宅兼工場などが強風によってトタン板が剥がれ通行人に怪我をさせる危険性がある場合もあります。

このような場合、親名義の不動産を相続した者が責任をもって対処すればよいわけですが、遺産分割協議などの相続手続きが済んでいない場合があります。単純に話し合いのスケジュールが遅れている場合もありますが、遺産分割方法について相続人間で争っている場合もあります。

今回は、このように未分割遺産である不動産について倒壊などの危険があるときの対応方法について検討してみます。


( 未分割遺産の管理について )

相続人が数人ある場合、相続財産はその「共有」に属するとされています。そのため、未分割遺産の管理については民法の共有の定めに従うことになります。

民法の共有の定めによれば、共有物の管理行為には「保存行為」「管理行為」「変更行為」があるとされています。

不動産倒壊などの危険がある問題に絞って考えれば、保存行為は共有物の現状を維持する行為です。軽微な修繕は保存行為になります。変更行為は共有物の現状を変更するような行為です。建物を増築するとか一部を取り壊すような行為です。建物の大修繕もこれに入る場合があると思います。管理行為は、その中間的な行為で共有物を管理する行為です。建物の通常の修繕行為が該当すると思います。

そして、「保存行為」は共有者はそれぞれ単独で行うことができます。共有物の現状を維持するだけの行為ですので各共有者が勝手にそれぞの権限で行うことができます。

「変更行為」は共有物の現状を変更する行為ですので共有者全員の同意が必要となります。各相続人が勝手に変更行為をすることはできません。

「管理行為」は、共有持分の価格の過半数に従い、その過半数の者の賛成を得て行うことができます。相続財産の共有持分は法定相続分によることになります。例えば、相続人が兄弟3名であれば、各相続人の持分はそれぞれ3分の1となります。つまり、兄弟の内の2名が賛成しなければ管理行為を行うことができないのです。

なお、令和3年の民法の改正によって、軽微な変更行為は過半数で行うことができるように改正されました。


( 危険のレベルに応じた具体的な対応方法 )

民法の定めは前述したとおりですが、実際問題としては、「軽微な変更行為」とか「軽微な修繕」行為、「大規模修繕」など言葉としての意味は理解できると思いますが、具体的な事例がないとピンと来ないかもしれません。

剥がれそうなトタン板の除去や張替え、防護ネットでの保護、屋根部分の雨漏り修理程度であれば、相続財産の現状を維持する行為として「保存行為」に該当し各相続人が単独で行うことができると思います。

但し、トタン板除去後の外壁工事について、その状態によっては保存行為として行うことができますが、改良となるような仕様とする場合は、管理行為として相続人の過半数の同意を得て行った方が安全です。

また、建物の倒壊の危険がある場合に建物を解体したり、耐震補強をする行為は工事の内容次第で変更行為に該当すると思います。

管理や修繕を相続人自ら行わないで管理会社や建築会社に委託する場合は、保存行為又は管理行為、変更行為の区別に従って、管理委託契約等を必要な相続人で締結する必要があります。


( 相続放棄したらどうなるか )

このような危険のある不動産は相続したくない場合の手段として「相続放棄」を検討することができます。相続放棄すれば危険な不動産以外の全ての相続財産を放棄することになりますが、他に目ぼしい財産がなければ選択肢になります。

相続放棄すれば、相続人は危険な不動産との関係がなくなりますので安心となります。3人の兄弟の内2名が相続放棄すれば、残された兄弟が全ての責任を負うことになります。

但し、相続を放棄した者が、相続放棄の時、問題の不動産の占有をしているときは、他の相続人又は相続財産の清算人に不動産を引き渡すまでは、自己の財産と同一の注意をもって管理・保存する義務があります。つまり、引渡し前にトラブルが生じれは責任が生じるということです。

また、全ての相続人が放棄をした場合、誰も責任を取る者がいなくなります。そこで、民法改正によって、新たに「所有者不明土地建物の管理制度」「管理不全土地建物の管理制度」、または改正された「相続財産管理制度」を活用して対応することとなりました。詳しい内容は、相続に詳しい弁護士や司法書士にお尋ねください。


( 現に不動産を占有している者の対応方法 )

相続人が全員相続放棄をする場合、現に不動産を占有している者は責任を逃れることができません。自らも相続放棄をするわけですが、前述したように他の相続人等に不動産を引き渡すまでは責任を回避できない定めとなっているからです。

相続不動産を現に占有している相続人が相続放棄をする場合は、相続財産清算人の選任申立てを裁判所に対して行い、選任された相続財産清算人に不動産を引き渡す必要があります。不動産を引き渡す前に発生したトラブルの責任は負うことなりますので出来るだけ早く引き渡す必要があります。

なお、相続財産清算人を申立てるには、相続財産清算人の報酬を申立人が裁判所に予納する必要があります。そのため、一定の費用負担の覚悟が必要になります。詳しい内容は弁護士や司法書士に確認してください。


( まとめ )

相続人が複数いる場合、相続開始から遺産分割までの間、全ての相続財産は法定相続分に応じた各相続人の共有状態となります。この間の相続財産の管理は、保存行為は各相続人が単独行うことができ、管理行為は各相続人の法定相続分の過半数の同意で行うことができます。そして変更行為は全員の同意が必要になります。

相続放棄をした場合は責任を免れますが、不動産を現に占有している相続人は、その不動産の占有を他の者に引き渡すまでは相続放棄をしても責任を免れることができません。

このあたりを十分注意して対応してもらいたいと思います。

 

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