相続した不動産にローンが残っていた場合どうなるのですか

父親が亡くなり、母親と長男、長女が相続人のケースで、相続財産である父の自宅に住宅ローンが残っていた場合どうなるのでしょうか。例えば、自宅を長男が相続した場合、母親と長女は住宅ローンを相続したくないと思います。父親の亡くなった年齢を考えるとローン残高は少ないかもしれませんが、長男に負担してもらいたいと考えると思います。


また、父親の保有する不動産が賃貸不動産 (賃貸マンション等)の場合、銀行ローンが残っているとするとローン残高が高額な場合があります。この場合も賃貸不動産を長男が事業として承継する場合、残ったローンは長男に相続してもらいと考えると思います。


相続では、相続人は自宅や預貯金などのプラスの財産だけでなく住宅ローンなどのマイナスの負債も相続します。マイナスの負債で分割できるものは、法定相続分に分割して相続することになります。住宅ローンは金銭債権ですので分割ができます。このため、住宅ローンは法定相続人の法定相続分に分割されて相続されます。

今回のケースで、住宅関係の残存ローンが1,000万円残っていると仮定すれば、母親が法定相続分である2分の1の500万円、長男・長女がそれぞれ法定相続分の4分の1である250万円のローンを相続することになります。これが、原則的な取扱いです。何も対応をしなければ、この扱いとなります。


しかし、通常は不動産を相続する相続人にローンを相続させたいケースが多いと思います。この場合は、次の手続きを取る必要があります。

1つの方法は、自宅や預貯金などの相続財産について、誰が何を相続するかを話し合う「遺産分割協議」の中で行う方法です。遺産分割協議の中で「長男が不動産を相続する」と定めるとともに「長男が残存ローンを引き受ける」と定めます。これによって相続人間では長男がローンを引き継ぐことが決まります。

但し、遺産分割協議書に定めただけでは、銀行などの金融機関に対して意味を持ちません。銀行は、遺産分割協議書にどのように書かれていても法定相続人に対して法定相続分のローンの支払いを請求をすることができます。

そこで、この遺産分割協議の内容を銀行に承認してもらう手続きが必要になります。実際上は、遺産分割協議をする前に銀行と協議をして了解を取り付けた上で遺産分割協議を実施することになります。これにより、相続不動産のローンの債務者は、亡き父親から長男に変更されることになります。


他の1つの方法は、遺産分割協議の中では、ローンを負担する相続人を定めない方法です。この場合は、ローンを気にせず自宅や預貯金などの遺産の分割協議を行います。ローン債務は、一旦、各相続人が法定相続分を相続することになります。

今後のローンの取り扱いについては、銀行と相続人全員が新たな契約 (「免責的債務引受契約」と言います) をすることによってローンの引受人を定めます。本例の場合は、長男が全ての債務を引き受ける契約とします。これにより、母親や長女はローン債務を免れることができます。


1つ目の方法であれ2つ目の方法であれ、銀行との事前の協議が必要になります。事前に銀行などの金融機関と相談すれば必要な手続きを案内してくれると思います。

 

なお、これとは全く別の方法として「相続放棄」を行う方法もあります。これは、相続人が家庭裁判所に相続放棄を申述すれば、相続人は初めから相続人ではなかったと扱われるのでローンに関しては引き継ぐ必要がなくなります。

但し、マイナスのローン残高を引き継がないと同時にプラスの資産も一切相続できなくなるので注意が必要です。賃貸マンションのローン残高が、まだ何億円も残っているような場合で、他の遺産には未練がない場合には選択肢になるかもしれません。

本例の場合、母親や長女は父親が亡くなってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を申述すれば、不動産を含め全ての遺産は長男が相続するとともにローンは全て長男が引受けることになります。

通常は相続財産全体を見て債務超過が明らかな場合以外は「相続放棄」を選択することは少ないと思います。預貯金などの相続資産とローンなどの相続負債とのバランスの確認が必要になります。

(まとめ)

父親が亡くなり相続した自宅などの不動産にローンが残っていた場合、何もしなければ相続人全員がローンの負担を負うことになります。

実際に不動産を相続する相続人のみがローンを負担するようにしたい場合は、事前に銀行などの金融機関に相談してローンの債務者を不動産を相続する相続人とする手続きをする必要があります。

 

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