相続した不動産に「買戻特約」の登記がされている場合どうしたよいですか

父が亡くなり父名義のマンションの相続登記を申請しようとしたところ、前所有者名義の「買戻特約の登記」が残っていました。買戻特約によって前の所有者に買い戻されるのでしょうか。買戻特約が付いている不動産は売却ができないとも聞いていますが、買戻し特約が付いている場合どうしたら良いのでしょうか。買戻特約の登記を抹消したい場合はどうしたら良いでのでしょうか。

今回は買戻特約の登記の抹消方法について見ていきます。


(「買戻特約」とは )

買戻特約で定める「買戻」とは、不動産の売買契約から一定期間後でも、売主が売買代金と契約にかかった諸費用 (※注1) を買主に返すことで、売却した不動産を買い戻すことのできる権利のことです。この権利の付いた特約のことを「買戻特約」と言います。別の言い方をすれば、契約解除の特約ということができます。また、買戻すことのできる一定期間のことを「買戻期間」といいます。

(※注1) 最近の民法改正によって、買戻すために必要な費用について、売買代金と契約費用の定め方の他に売主と買主の合意で定めた金額及び契約費用とすることもできるようになりました。

昔は、金融機関の担保の一形態として活用されていましたが、抵当権などによる担保が主流になるにつれて担保としての活用は見られなくなりました。現在では、公的機関 (都道府県、市町村、住宅供給公社、都市再生機構など) が宅地分譲をするときに用いられています。分譲の際、買主が自ら居住することを条件として、一定期間転売を禁止し、これを守らなかった場合は契約を解除して買い戻すというものです。転売業者による不正転売を防止して、本当に必要な方に住宅が供給できるようにしているのです。

買戻し期間は最長10年です。これを超える期間を定めても10年に短縮されます。また、後で伸長することはできません。期間を定めなかった場合は5年となります。また、買戻特約は不動産に登記することができます。買戻特約の登記は、不動産の売買による所有権移転登記と同時に行われます。

不動産に買戻特約の登記がされていると第三者にも対抗できることになります。そのため、買戻特約の登記がされた不動産を第三者が購入しようとする場合、購入者は買戻特約の登記の抹消を要求することになります。不動産を購入した後、買戻されるリスクがあるからです。


( 買戻特約の登記を抹消をする前にすべきこと )

買戻特約の登記を抹消するには、不動産の所有者と買戻権者である公的機関が、原則として、共同して登記申請する必要があります。現在、不動産の名義人は亡くなった父親名義となっているため、まず、相続による名義変更 (相続登記) を行って、相続人名義にする必要があります。

その後、不動産の相続人と公的機関が、原則として、共同して買戻登記の抹消申請を行います。


( 買戻登記の抹消方法 )

買戻特約の抹消方法は、①売買契約から10年経過する前か、②売買契約から10年経過後か、によって抹消方法が異なります。

(1) 10年経過前の抹消方法

不動産の所有者(名義人)と買戻権者(公的機関)の共同申請によって登記申請を行います。

例えば、買戻期間が8年間で、現在、売買契約から9年目であるとします。この場合は、買戻し期間は経過していますので、買戻すことのできる権利は消滅しています。不動産の所有者は買戻権者と共同で買戻特約の抹消登記申請を行います。買戻権者である公的機関は、申し入れれば、共同申請に応じてくれると思います。

買戻期間8年間で、現在、売買契約から7年目である場合は、買戻権者の同意が必要になります。同意するかどうかは買戻権者次第ということになります。同意してくれない場合は、期間満了まで1年待つことになります。

(2) 10年経過後の抹消方法

不動産の所有者(名義人)の単独で買戻特約の抹消登記申請を行うことができます。

最近の民法の改正によって、売買契約から10年経過した後は、買戻権者の協力を得ることなく不動産の所有者が単独で買戻特約の抹消の登記申請をすることができるようになりりました。

これは、買戻し期間は最長で10年間であり、これより長い期間を定めることができず、延長することも認められていないため、10年が経過すれば買戻権が消滅(失効)するからです。従来は、この場合も不動産の所有者と買戻権者との共同申請を要求していましたが、民法の改正によって不動産所有者の単独申請で行えるようになりました。


( 10年経過前で買戻権者が行方不明のとき )

売買契約から10年経過前で買戻権者が行方不明のことがあります。買戻権者は最近は公的機関ですので行方不明にはなりませんが、不動産の売主が私人で買戻特約付きの売買契約を行うこともあります。担保目的で買戻特約を付けていた場合もあります。

このような場合、10年経過前では、買戻し期間が経過していても買戻権者の協力なくしては買戻特約の抹消申請はできません。10年経過後まで待てば、不動産の所有者だけで抹消登記申請できるので問題ありませんが、どうしても、今現在、売却したい場合などでは困ります。

この場合は、裁判所に「公示催告」の申立てを行い、「除権決定」を得ることで所有者が単独で抹消登記申請を行うことができます。

公示催告とは、裁判などで相手方当事者の行方が分からない場合の相手方へのメッセージの通知方法です。裁判所の掲示板などにメッセージを掲載し、一定期間経過後にメッセージが適法に相手方当事者に届いたと擬制するものです。実際に裁判所の掲示板など誰も見ませんのでメッセージが相手方当事者に届いたとする法的な「便法」です。便法ですが、完全に有効な法的効力を生ずるものです。

この公示催告の申し立ては、相手方当事者の権利を不当に侵す可能性がありますので、申立てには厳格な要件が定められています。今回の場合で言えば、買戻権者の所在が不明であることの証明をどの程度行うかということになります。

従来、この公示催告の申し立てにおける相手方当事者の「所在不明」の証明度合いは、「公示送達」の要件に準じて行われており、かなり厳しい調査が必要とされていました。

公示送達とは、裁判を提起し継続するには、訴状などを相手方当事者に「送達」する必要がありますが、相手方当事者の行方が不明の場合の送達方法です。公示送達を申立てるには、当然、厳しい要件(不在調査)が定められていました。


ところが、最近の不動産登記法の改正によって、買戻特約の抹消登記申請における相手方当事者の所在不明の証明度合いが大幅に緩和されました。

それによれば、「相当の調査」を行っても買戻権者の所在を明らかにすることができない場合は、その者の所在が知れないものとみなして、不動産所有者の単独申請ができることとなりました。

この場合の相当の調査とは、所在不明の買戻権者の所在調査を、登記簿上の住所や氏名などを基に戸籍や住民票、戸籍(附票)などを調査して、所在を確認し、その住所宛に郵便を送付して到着有無を調査し、転居先が判明するのであれば、これを追跡して調査すれば足りるものとされました。つまり、このような調査をしていれば、現地調査をして詳細な調査報告書の作成などをすることは不要とされました。


(まとめ)

「買戻特約の登記」は、公的機関から不動産を購入した場合よく見られる特約です。相続が発生して相続人が初めてその存在に気付くことも多いと思います。

相続で発見される場合は、売買契約から10年を経過しているものが多いため、簡単に抹消登記をすることができます。抹消登記申請は司法書士に依頼ください。

10年未満であっても買戻し期間が経過していれば抹消できますので、司法書士に相談してください。

 

Follow me!