生命保険を掛けた本人より受取人が先に亡くなったらどうなるのですか
夫が生命保険を掛けて死亡保険金の受取人を妻とするように指定したとします。ところが、妻の方が病気や事故で先に亡くなったとします。通常は、妻が亡くなった時点で生命保険契約の見直しを行い新たな受取人を指定することになります。ところが、生命保険の受取人の変更まで気が回らず、そのままとなっている場合があります。その後、夫が亡くなったとき生命保険金は誰が受け取ることができるのでしょうか。
今回はこの問題について考えて見ます。次のような具体的事例で考えます。
生命保険を掛けた夫婦には子供がなく、それぞれの両親は既に他界しているとします。夫には弟が1人います。妻には妹が2人います。
このケースで、妻が亡くなり、その後夫が亡くなったとします。夫は妻を受取人とする生命保険を掛けていましたが、受取人の変更をしていません。
( 生命保険金は誰が受け取れるのか )
保険契約者の死亡時に受取人となる者が既に死亡していた場合の受取人となる者の範囲と取得割合は、契約している保険会社の「保険契約約款」を確認する必要があります。
生命保険について受取人が亡くなっているにも拘らず受取人の指定変更をしないで死亡するケースが多いため保険会社の契約約款で取扱い方法を定めている場合があるからです。
従って、まずは保険契約約款を確認してみることが必要になります。そして、定めがあればその定めに従って取り扱うことになります。
( 保険契約約款に定めがない場合の取り扱い方法 )
保険契約約款に特段の定めがなく保険金受取人が保険事故 (夫の死亡) 以前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人になります。
また、相続人の範囲について、受取人の法定相続人のみならず、その「次順位の法定相続人」も含まれるとされています。それらの者のうち被保険者(夫)の死亡時に現に生存する者が保険金受取人となります。
この取扱は平成5年の判例によって示されたものです。通常の相続の方法とは異なっていますので注意が必要となります。裁判所は保険金の受取人が不存在になることを避けるためにできるだけ広い範囲で保険金受取人を捉えようとしています。
法定相続人のみならず、次順位の法定相続人も受取人になる点がポイントとなります。また、相続人が受け取る割合についても「相続人の頭割り」としています。つまり、均等に分けることになります。この点も通常の相続とは異なっています。
今回のケースで考えて見れば、保険の受取人である妻が亡くなった時点で妻の第一順位の法定相続人は夫です。第二順位の法定相続人は妻の両親ですが亡くなっていますの対象外となります。第三順位の法定相続人は妻の妹2人です。この2人も受取人になります。
また、保険金が下りるのは夫が亡くなったときです。そうすると、保険金の受取人である地位は夫の法定相続人となります。夫の第一順位の法定相続人は妻ですが亡くなっています。第二順位の法定相続人は両親ですが亡くなっています。第三順位の法定相続人は夫の弟です。従って、弟が受取人となります。
そして、夫の弟と妻の妹2人の3名で保険金を受け取ることになります。受け取る額はそれぞれ均等の3分の1ということになります。
このような相続の仕方は通常の相続方法とは異なりますので注意が必要になります。
( 保険金の受取人が死亡した場合は受取人の変更を行う )
生命保険は掛けっぱなしになっていることが多くなっています。受取人に誰を指定したかすら忘れてしまって放置してあることが多いのです。本来は、受取人が死亡したら速やかに契約変更をして受取人の指定変更をする必要があるのです。
この受取人の指定変更をしないでいると、親族関係によっては本人の全く意図しない方に保険金が流れていくこともあり得ることになります。次順位の法定相続人も受け取ることができるので相続人の範囲が広がってしまうからです。
( まとめ )
生命保険の受取人の指定方法については、指定方法によっては贈与税や所得税が発生するため注意して指定方法を考えると思います。しかし、一旦指定してしまうとその後のフォローはあまり考えていないことが多いのです。
親族が亡くなったときは生命保険の受取人に指定していないかについて確認してみることが必要になります。気に留めておいてもらいたいと思います。