役所で見かける「おくやみコーナー」って何ですか

身近な方が亡くなった後の役所における手続きについて、色々な窓口を回らなければならないため苦労することが多いと思います。準備しなければいけない書類もそれぞれに必要になるので、1つの窓口の処理が終わったら、また別の窓口で書類を準備して手続きを行うことになり大変面倒なことになります。下手をすると窓口を「たらいまわし」にされることもあります。


(役所の「おくやみコーナー」とは」)

このような死亡や相続に関する役所手続の不便さを解消するものとして「おくやみコーナー」の設置が検討されてきました。「おくやみコーナー」は、死亡時の役所手続の案内や申請書の作成サポート、各種証明書の取得サポートなどを行う総合窓口のことです。

政府の内閣官房IT総合戦略室は、デジタル・ガバメント実行計画の一環として「死亡・相続ワンストップサービス」を推進しており、これを受けて全国の自治体で「おくやみコーナー」の試行や導入が進められています。


名古屋市でも7つの区役所と2つの支所で試行が開始されています。サポートを受けたい方は電話又はウェブでの予約が必要なところが多いと思います。

ただし、全国の自治体レベルで見ると設置はこれからというところが多いのが実情です。全国1,728の自治体がある中で、令和2年度に設置されたのは169自治体にとどまっており、普及率で見ると9.8%と低くなっています。しかし、高齢化が急速に進んでいる中、国民のニーズも高まっていることから、今後は急速に拡大・普及していくものと思われます。


( 役所での必要な手続き )

おくやみコーナーでは、「おくやみハンドブック」を作成して配布している所が多いと思います。このなかで必要な手続きを網羅的に案内しています。それぞれの手続の「対象者」「必要な届出や請求」「手続きに必要なもの」などについて解説しています。

このハンドブックも活用しながら、おくやみコーナーの窓口担当者の支援も受けて手続きを円滑に進めていくことになります。1人で悩みながら手続きを進めるのに比べて大変心強く作業を効率的に行うことができると思います。

身近な方が亡くなったら、役所に死亡届さえ出せば、後は役所の方で色々と処理してくれると思っている方もいます。しかし、死亡届だけでは「埋葬許可証」の発行や戸籍・住民票などへの死亡処理がされる程度の手続しか行われません。


これ以外にも、世帯主変更届の申請など色々な手続きが必要になります。公的な書類の返還手続きだけでも、例えば、「印鑑登録証の返還、破棄」「住民基本台帳カード、マイナンバーカードの返還」「国民健康保険や後期高齢者医療保険などの被保険者証の返還」「身体障害者手帳の返還、愛の手帳等の返還」などがあります。お金が頂ける手続としても「葬祭費の申請」「高額療養費の申請」などがあります。

役所関係の相続手続きは、大きく分ければ次のように分類することができます。

(1) 健康保険関係
……  資格喪失届、保険証などの返還、葬祭費の支給申請など

(2) 介護保険関係
……  介護保険被保険者証の返還、介護保険料の清算など

(3) 年金関係 
……  死亡届、未支給年金請求、遺族基礎年金請求、死亡一時金請求、寡婦年金請求など

(4) 税金関係
……  各種税に対して相続人代表者の届出など

(5) その他
……  障がい者が亡くなったとき(障がい者手帳等の返還手続など)、子供が亡くなったとき(児童手当、こども医療費助成手続など)、市営住宅の手続、上下水道の手続、など

 


( その他日常的に必要となる手続 )

役所での手続が一通り完了しても、まだまだ処理しなければいけない事柄があります。よくある役所が関係しない日常生活上の必要な手続きは次の通りです。

① 公共料金などの名義変更、解約
② クレジットカードの利用停止、解約
③ スマートフォンの解約
④ 墓地管理者の変更手続   など

( 最後に残る「遺産相続」手続 )

これらの手続きを完了しても安心できる状況にはありません。最大の難関である「遺産の相続手続」を最後に処理する必要があります。また、この中で相続財産の多い方は「相続税の申告手続」も同時に行う必要があります。

遺産相続手続とは、亡くなった方の所有していた「不動産の名義変更」「預貯金の相続手続」「株式の相続手続」「投資信託等の相続手続」「FX、ビットコイン等の各種金融商品の相続手続」「生命保険の請求手続」など色々なものがあります。

この中で、不動産の名義変更(「相続登記」)は手間や費用がかかるため後回しにされ易く、場合によっては長期間放置されてしまうこともあります。しかし、令和6年4月1日より不動産の相続による名義変更が法律上の義務となるため、このような取扱いはできなくなります。

遺産相続手続の手順は、それぞれの手続で必要な書類等は異なりますが、基本的な流れは共通しています。具体的には次のような段取りで行います。

(1) 遺言書の有無確認 (自筆証書遺言の場合は検認手続きの実行)

(2) 相続人の調査 (戸籍収集)、相続財産の調査

(3) 相続人全員による「遺産分割協議」の実施

(4) 財産毎の相続手続の実施

この中で「遺産分割協議」については、相続人全員が集まって、亡くなった方の遺産の分割方法を協議します。(遺言書が作られていた場合はその指定に従います。) 分割には相続人全員の一致が必要になります。一致した結果は証拠書類として「遺産分割協議書」に記載して相続人全員が署名・捺印します。


( 遺産相続手続を専門家に頼みたい場合は )

遺産相続手続も相続人がご自身で全て行うことができます。しかし、ここまででも大変な手続であるため、遺産相続手続は専門家に依頼したいと考える方も多いと思います。そのときは、相談先として相続手続に詳しい近くの司法書士が良いと思います。

相続手続の実施にあたっては、必要書類への署名・押印などの処理が何回も発生する場合がありますので、近くの司法書士の方が便利だと思います。

また、相続財産に不動産が含まれていれば、「相続登記の義務化」により相続登記が必須になりますので、登記の専門家である司法書士に依頼した方が効率的となります。

自筆証書での遺言書がある場合は、家庭裁判所への「検認手続き」が必要になりますが、司法書士が手続きを支援します。また、遺産状況によっては、「相続放棄」の必要がある場合もありますが、家庭裁判所への相続放棄手続も司法書士が支援します。

「遺産承継」を含めた相続手続全体をサポートする司法書士であれば、不動産の名義変更(相続登記)から預貯金などの金融資産の相続手続まで幅広く対応してくれると思います。さらに、依頼を受けた相続財産から判断して「相続税の申告」が必要と判断した場合は、相続税の申告に詳しい税理士を紹介してくれると思います。このように司法書士に依頼すれば、遺産相続手続は相続税の申告を除いてワンストップで行うことができます。

もちろん、遺産分割協議で相続人間に争いがある場合は、相続人間で十分話し合ってもらう必要があります。しかし、どうしても合意点が得られない場合は、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」の申立を行うことができます。その場合も司法書士が申立書の作成など必要な支援を行います。

遺産分割調停が不調になった場合は、裁判手続きを行う必要がありますので相続に詳しい弁護士を紹介することになります。


(まとめ)

身近な人が亡くなった場合の相続手続は非常に面倒なものとなっています。相続人の方が仕事で平日の時間帯を確保できない場合は手続きに大変苦労することになります。

行政も相続手続をできるだけストレスなくできるように「おくやみコーナー」の設置に力を入れています。おくやみコーナーは今後拡大していくと思いますので、行政の努力に期待したいと思います。

役所の相続手続以上に面倒な「遺産相続手続」については、ご自身での対応が難しい方は、専門家の支援を受けて頂きたいと思います。ご自身で行って手順を誤れば、費用と時間ばかり浪費してしまいます。多少の費用は掛かりますが、専門家に依頼した方が、余分な苦労をしなくて良いかもしれません。

 

 

Follow me!