夫が亡くなり相続人が「妻」と「未成年の子」の場合、妻が遺産の分割方法を決めても良いですか

夫が若くして亡くなり相続人として妻と未成年の子の場合があります。例えば、夫が40歳で亡くなり、法定相続人として35歳の妻と未成年の長男(8歳)と長女(5歳)がいるとします。相続財産として自宅不動産や金融資産があるとき、遺産の分割方法として妻が一人で決めてよいのでしょうか。

今回は、妻と未成年の子の利益が相反する場合の遺産相続について考えたいと思います。


( 利益相反行為と特別代理人の選任 )

今回の事例では、夫が亡くなりその法定相続人は残された妻と子供となります。遺産相続については、本来は、法定相続人全員の話し合い (「遺産分割協議」) で遺産の相続方法を決めます。しかし、今回のケースでは、法定相続人は妻と幼い子供たちのため、2人の子どもの親権者である妻が自分と子供2人にとって最も望ましい相続方法を考えて遺産の分割をしたいと考えています。しかし、このような方法は認められていません。

これは、親権を行う父または母とその子とが利益相反する場合について、親権を行う者は、その子のために「特別代理人」を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないとされているからです。利益相反とは、お互いの利益が相反(あいはん)することです。妻の相続分を多くすれば子供の利益を侵害します。子供の利益を優先すれば妻の利益を損ないます。

遺産分割協議という相続人間の利益の対立する行為については、法律は未成年者のために特別代理人を選任して、その者と遺産分割協議をすることによって公平性を担保しようとしています。

妻が子供たちのことを真剣に考えて最も最適な分割方法を考えたとしても認められません。子供たちの相続分をより多くして妻の取り分を極力少なくなるような分割案としても認められません。遺産分割の手続き方法が法律に違反しているから認められないのです。

法律は、相続人が妻と残された未成年の子の場合は、その外形的な関係性から客観的に利益が相反する場合であると判断します。妻の内心の心情などは考慮せずに判断します。


( 特別代理人の選任方法 )

特別代理人は、子の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。特別代理人の候補者を申立書に記載して行います。特別代理人の候補者は法律の専門家でなくても適任者であればだれでも良いとされています。例えば、親戚の叔父さんでも適任者であればOKです。

今回の事例では、未成年の子供が2人います。そのため、特別代理人は未成年の子ども単位に選任する必要があります。つまり、長男の特別代理人と長女の特別代理人の2人の特別代理人の選任が必要です。遺産分割協議は、妻と特別代理人2人の3人で行います。

仮に、何らかの事情で妻に相続権がない場合があります。例えば、妻が夫の相続について相続放棄をした場合などのケースです。この場合は、妻は1人の子ども(例えば長男)の法定代理人となれますので、長女のための特別代理人だけを選任すればよいことになります。この場合の遺産分割協議は、長男の法定代理人としての妻と長女の特別代理人の間で行います。

なお、司法統計によれば、毎年、特別代理人は1万人前後の選任申立てがあるとのことです。

( 特別代理人の役割 )

特別代理人に選任された者は代理する子供のために行動する必要があります。特別代理人を依頼した妻との関係から、妻の意を汲んで妻主導の分割案に安易に同意することはできません。

つまり、代理人が同意すればどんな内容でも有効になるわけではありません。未成年の子にとって明らかに不利益となる遺産分割は認められないということです。当然、妻が全て相続するという内容では合意してはいけないのです。あくまで未成年者の利益を最優先にして考える義務があるのです。

もちろん、形式的に見ると不利益な分割案でも、実質的に見れば合理性がある場合もあります。例えば、借金があるため相続しない方が有利であるとか、将来の維持費や税負担の大きい不動産は避けた方が良いとか、代償金で補填されている場合、などです。分割内容の実態をよく見て判断する必要があります。

なお、実務上は、特別代理人の選任申立て段階で、家庭裁判所に遺産分割(案)を添えて申立てることが普通です。事前に家庭裁判所の目が入ることになります。この段階で極端に子供に不利な内容では家庭裁判所から指摘されることになります。

 


(まとめ)

夫が若くして亡くなると相続人が妻と未成年の子の場合が発生します。このケースでは相続人間で利益相反となるため、未成年の子のために「特別代理人の選任」という手続きを経なければなりません。

親戚の叔父として特別代理人を受ける場合は、子のための代理人として子の利益を優先して考えてあげる義務が生じます。残された妻の意向に沿った安易な合意は避けなければならないということです。

なお、相続手続きなどで不安のある方は相続を専門とする司法書士に相談してください。適切に対応してくれると思います。

 

 

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