兄弟3人が「共有で相続した土地」を賃貸したいのですが考慮点はありますか
父が亡くなり遺産である土地(更地)を相続することがあります。相続人が兄弟3人で、父の自宅や金融資産などは兄弟それぞれが単独で相続したのですが、遊休土地は兄弟3人の共有 (長男3分の1、長女3分の1、次男3分の1) とすることがあります。相続先について協議がまとまらなかったので、公平に共有として相続したのです。
このとき、相続した土地を遊ばせておくのは勿体ないので他人に貸して収益不動産にしたいと考える者もいると思います。また、将来、他の兄弟から持分を譲り受けて自宅を建てたいと目論む者もいるかもしれません。土地を共有状態で相続すると色々と面倒な問題が生じる可能性があります。
今回は、このような状況でよくみられる「共有で相続した土地の賃貸」について考えてみます。

( 共有物の「管理」と「変更」について )
共有物の共有者は、共有物に対して、これを「管理」したり「変更」を加えたりすることができます。
このとき共有物の「管理」に関する事項は、各共有者の持分の価格のに従い、その過半数により決するとされています。また、各共有者は、他の相続人全員の同意を得なければ共有物に「変更」を加えることができないとされています。
つまり、共有物に対して行おうとしている行為が「管理」行為に該当するか「変更」行為に該当するかによって賛同者が異なってくるのです。今回の事例で言えば、相続人のうち2人が賛成しなければ管理行為はできません。また、全員が同意しなければ変更行為はできないのです。
そこで、どのような行為が管理行為に該当し、どのような行為が変更行為になるのか、が重要になります。そこで、この点について次に見ていきます。
尚、管理や変更とは区別して「保存」行為というものがあります。これは、共有物の現状を維持する行為です。保存行為は各共有者が単独行うことができます。現状を維持するだけですので他の共有者の利益に影響を与えないからです。また、共有物を売却するような「処分」行為がありますが、処分行為は、各共有者全員の同意が必要になります。処分すれば共有者全員の利害に直接影響してきますので当然のことです。

( 土地の賃貸は「管理」か「変更」か )
令和3年の民法改正によって、以下に掲げる賃貸借その他の使用及び収益を目的とする権利であって、それぞれに定める期間を超えないものを設定することについては、「管理」として行うことができると定められました。
① 樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃貸借など 10年
② 前号に掲げる賃貸借等以外の土地の賃貸借など 5年
③ 建物の賃貸借など 3年
④ 動産の賃貸借など 6か月
今回の事例で関係するのは、②の「土地の賃貸借 5年」です。賃貸期間が5年を超えなければ管理行為になるということです。
但し、土地の賃貸借については、他の法律の定めがあるため、どのように貸すのかによって結論が異なってきます。更地を貸し駐車場として貸すのか、住宅の建築用の土地として貸すのか、工場の資材置き場として貸すのか、仮設の選挙事務所の用地として一時的に貸すのか、など色々な賃貸形態があります。

住宅の敷地として貸す場合は、「借地借家法」が適用されます。借地借家法は借り手側の保護が手厚い法律です。
借地借家法が適用される賃貸借契約は、契約更新が原則とされ、事実上、賃貸借契約が長期間継続する蓋然性が高くなります。そのため、共有者による使用、収益に及ぼす影響は、上記②の5年を超えることが想定されます。
従って、住宅の敷地として土地を貸し出す行為は、「管理」とは言えず、「変更」に該当することになります。つまり、共有者全員の同意がないと住宅の敷地として貸し出すことはできないということです。
逆に、短期間で確実に土地が返却される「仮設の選挙事務所として使用する」とか「臨時の資材置き場として半年使用する」などの場合は、「管理」に該当し共有者の持分の過半数の賛成で行えることになります。
尚、「持分権の過半数によって決定することが不相当と言えない事情がある場合は、長期間の賃貸借契約の締結も管理行為に当たる」とした裁判例もあるため、契約締結における背景や事情も判断の重要な要素となります。しかし、該当するケースは稀だと思いますので、住宅の敷地としての土地の賃貸借は、通常、変更行為と考えておいた方が安全だと思います。

( 「変更」の定義の改正について )
先ほど紹介した令和3年の民法の改正では、「変更」の定義についても改正がなされました。改正内容は、簡単に言えば「軽微な変更は変更から除く」というものです。
改正法によって、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは変更から除き管理とされました。
「形状の変更」とは、その外観、構造を変更することをいいます。「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することを言います。
これにより、例えば、駐車場用の敷地の砂利をアスファルト舗装することは変更ではなく管理と考えられるようになりました。建物の外壁・屋根防水等の修繕工事も管理行為と考えられます。また、共有土地を分筆する行為も管理行為と考えられます。

(まとめ)
相続した土地を相続人で共有することがあります。但し、その土地を長期に渡って所有するのではなく、適当な時期に売却して売却金を共有者間で分配することを考えている場合があります。この場合は共有状態でも問題はあまり生じないと思います。
しかし、今回のケースのように、何らかの活用を前提に土地を共有している場合、管理や変更に当たって、共有者間で意思統一できないと揉めることになります。そのため、土地などの不動産の相続においては、共有での相続を専門家は勧めないと思います。
どうしても共有で行く場合は、土地の管理や変更についてよく理解しておくことが必要です。また、第三者に管理行為として土地を貸し出す場合は、賃貸借契約上で短期の賃貸借で契約の更新は発生しない旨を明確にしておくことが必要になります。
不動産の賃貸借にあたって不安のある場合は、弁護士や司法書士に相談してください。必要なアドバイスをしてもらえると思います。


