亡くなった親の実家を「空き家」のまま「放置」していますが問題ありますか

親が亡くなり銀行預金などの金融資産は相続人間で話し合って相続手続をしていても、老朽化して誰も住まなくなった親の実家については「空き家」のまま放置している場合があります。

相続に伴う不動産の名義変更 (「相続登記」) が面倒な手続きのため、相続人の間でも対応が後回しになり、結果として「放置」されてしまうのです。最近の統計によると2018年から2023年までに売却などの予定のない長期間放置されている空き家は37万戸も増加しているとのことです。

それでも親の実家ですので最初のうちは近くの相続人などが時々立ち寄って状況を確認する場合があります。しかし、それも段々と億劫になっていきます。

それでは、このように空き家を放置するとどのような問題が生じるのでしょうか。今回はこの問題について考えてみます。


( 老朽化した「空き家」を放置するリスク )

老朽化した建物の場合、強い台風や地震で倒壊または半壊する恐れがあります。倒壊しないまでも瓦やトタンなどの壁が風にあおられて周囲に飛散し事故を起こすことがあります。

無人の空き家は、放火や漏電などの火災発生のリスクがあります。犯罪者が不法に侵入してしまうことも考えられます。

また、現実的に発生し得るリスクとしては、雑草や植木が伸びて虫が大量に発生してしまうことがあります。特にハチの巣が作られると危険になります。野良猫やネズミ、ハクビシンなどの野生動物が住みつくことも考えられます。

雨水対策として窓を閉め切っていれば、室内にカビなどが発生して建物自体の老朽化を早めることになります。

建物の立地条件によっては、通行人の不法投棄がなされる場合があります。不法投棄が繰り返されると「ゴミ捨て場」のようになります。こうなれば悪臭も発生します。


このような状況によって迷惑を受けるのは近隣の住民です。状況が悪化すれば、近隣住民から「苦情」の発生が予想されます。事故などが発生すれば「損害賠償請求」されるリスクもあります。最近の民法の改正によって、空き家の相続人に対する責任追及の仕組みが色々と整備されていますので注意が必要になります。

また、これらとは観点が異なりますが、「近隣不動産の価格低下リスク」の問題もあります。東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センターの研究によると、空き家が1軒あると、半径50メートル内の住宅取引価格が3%下落するとされています。このこともまた近隣住民に対する悪影響の1つとなります。


( 対策としてはどのようなことを考えたらよいか )

まず、相続人でよく話し合って、亡くなった親の空き家は誰が相続するか決めることが必要です。空き家の相続人が決まっていないため責任が不明確になり必要な対策ができないのです。

そこで、空き家を相続する者を話し合いで決めて、空き家の「相続登記」をすることが必要になります。空き家の「所有者」(名義人) となった者が自らの責任で必要な対策を行うことになります。

空き家を相続した者は、空き家を「定期的に見回る」ことが必要になります。窓を開けて換気・湿気対策を行います。定期的に湿気対策をしないと床がたわんでしまうことがあります。

また、水道の蛇口を開いて水を出すことも必要になります。水道のU字管に水が乾燥でなくなればネズミや害虫がそこから室内に入り込みます。そのため、U 字管には一定の水を張っておくことが必要になります。

庭や建物周囲の状況を確認して除草剤を蒔くなどの雑草対策を行います。建物の痛み具合を確認して修繕が必要な箇所は対策を行います。ゴミなどの不法投棄などがないことも確認します。


このようなことを定期的に行うことが難しい場合は、民間の専門の管理会社に作業を委託することもできます。簡単な外観確認だけであれば月1回の確認実施で3千円程度の費用で依頼できます。確認結果を報告書にして写真付きで毎月送付されてきます。

月額6千円以上の費用を掛ければ、空き家の鍵を渡して窓やドアを開けて換気をしたり、水道の蛇口を開いて水を通すなど色々なオプションサービスを受けることができます。空き家に伴う事故対策として損害賠償保険がセットされているサービスもあります。

 


(  抜本的な対策も併せて検討する必要があります )

亡くなった親の実家は「空き家」となっても大切な思い出の場所です。相続した者の思い出の場所であると同時に他の相続人の思い出の場所でもあります。そのため、処分することには抵抗があります。

しかし、一定の期間「空き家」として面倒を見続けたとしても有効活用する目途がないのであれば、どこかの時点で処分することを検討することが必要になります。老朽化した空き家であっても管理費用が掛かります。固定資産税の負担が発生していれば、長期間所有し続けることは負担が大きくなります。

他の相続人ともよく話し合って、売却できる物件であれば売却を検討する必要があります。売却が難しい物件であれば、建物を取り壊して国への引取りを考えることも一つの選択肢になります。一定の引取り条件と費用負担はありますが、条件が合えば国に引き取ってもらえますので検討してみる価値はあります。(「相続土地国庫帰属制度」と言います )   地方法務局の本局などで相談に乗ってもらえます。

 


( まとめ )

いらない不動産でも相続人は相続して管理する必要があります。管理が管理が不十分で他人に危害を加えれば損害賠償責任が発生します。

令和6年4月1日からは、相続した不動産の相続登記も法律上の義務になっています。そのため、亡くなった親の実家について「空き家」の状態となった場合でも必要な管理を継続的に行っていく必要があります。また、放置して近隣住民に迷惑をかけないように色々な対策を行う必要もあります。

空き家を相続して売却する場合は、税制面の優遇措置を受けることができる場合がありますので税理士に相談して下さい。相続登記など相続手続等で分からないことがあれば司法書士に相談下さい。色々なアドバイスをしてもらえると思います。

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