亡くなった父が株式取引を行っていたが、口座がどこの証券会社にあるか分からないとき、どうしたら良いですか
亡くなった父親の遺産の整理のため父親の預金通帳を見ると上場会社からの配当金が毎年振り込まれていることがあります。母親に聞いても父がどこの証券会社で取引していたか知らない場合があります。
2014年に始まったNISAは2024年に優遇措置が拡充されています。金融庁の調査によれば、NISAの口座数は2024年9月時点で2,508万件となっています。多くは働き盛りの方の口座ですが、高齢者の口座保有も増えています。70歳代は285万件、80歳代以上も149万件に上っています。
このような状況のため、高齢者が亡くなったとき株式を保有していることも多くなっています。大抵の場合は、取引証券会社も明確となっているため、取引証券会社に対して相続手続きをすればよいことになります。しかし、今回の事例のようにどこの証券会社か分からないと困ります。
今回はこのような場合の対応方法について考えてみます。

( 遺品の中から証券会社からの手紙を探す )
まず最初に行うことは、亡くなった父親の遺品の中の郵便物の確認から始めます。通常、証券会社と株取引を行って入れば、取引明細書や残高通知書が取引の都度あるいは定期的に送付されます。
そのため、この書面を見つけ出せれば、そこに記載されている証券会社が口座保有証券会社である可能性が高くなります。

( 証券会社からの手紙類が見当たらない場合 )
親の遺品である郵便物を確認しても証券会社からの通知書などが見当たらない場合があります。証券会社に対して通知不要としている場合であれば郵便物は届きません。ネット証券などでスマホ画面などで確認できるサービスを利用していれば郵便物は届きません。
このような場合は、過去に取引のあった証券会社や亡くなった父親から聞いたことのある証券会社に対して確認してみることになります。
亡くなった父親の住所・氏名、生年月日、振り込まれている株式銘柄名などをもとに、取引有無について、電話による照会でも回答してくれる証券会社は多いと思います。過去に取引きはあったが現在は口座が閉鎖されていると回答される場合もあります。
なお、証券会社は合併されて証券会社名が変更になっている場合が多いため、証券会社名も過去の証券会社名をもとに現在の証券会社名を調べて確認する必要があります。

( 最後は「ほふり」へ開示請求する )
いろいろと手は尽くしたものの取引証券会社の手がかりがつかめない場合は、最後の手段として、株式の振り替え業務を行う「証券保管振替機構(通称ほふり)」へ開示請求をすることになります。
ほふりに開示請求すれば、故人が株式取引をしていた証券会社名を開示してくれます。銘柄名や株式数については教えてくれません。相続人が開示された証券会社に確認する必要があります。また、投資信託や社債などについては株式ではありませんので対象外となります。
ほふりへの開示請求は有料となっています。請求が空振りで該当の証券会社が判明しない場合でも開示費用は掛かります。相続人の場合は1件6,050円です。開示された資料が代引き扱いで郵送されるので、その場で支払います。
なお、ほふりへの開示請求が最近は急増しているとのことです。10年前は月平均100件程度の開示請求が、最近は10倍の1,000件に上っているとのことです。そのため、開示請求には時間がかかっています。開示請求書類に不備がなくても1か月程度の期間はかかります。時間に余裕をもって請求することが必要になります。
遺産分割協議書などの作成については、十分な時間的余裕を見ておく必要があります。開示請求書類に不備があると、さらに期間が延びますので注意が必要です。

( 開示請求をする上での注意事項 )
ほふりへの開示請求をするには、ほふりのホームページから申請書類などをダウンロードして請求します。記載内容などに不備があれば補正の上対応する必要があります。最近は開示請求件数が急増していることから、わずかな不備でも開示されるまでの時間が長くかかります。
ほふりのホームページを見ると分かりますが、請求される方の区別に応じてパターン分けがなされ必要な書類が異なっています。また、請求書の書き方や添付する書類に関する説明が事細かく書かれています。
この説明書きを適当に読んで請求してしまうと書類不備で時間が長くかかる可能性が高くなります。そのため、開示請求に関する説明書きは、細かな注釈に至るまで丁寧に読み込んだ上で書類を作成し、また必要書類を集める必要があります。説明書きは細かく色々と指定されていますが、しっかり読む必要があります。
「資料は全てコピーで提出すること。」「戸籍をコピーする場合は全てのページを漏れなくコピーすること。」など細かな指示が書かれています。これらの指示に従わなければ補正の指示が出るものと思われます。

(まとめ)
亡くなった親が株式投資を行っていて取引証券会社が不明の場合は困ることが多くなります。遺産分割協議書については、とりあえず株式抜きで作成することはできます。株式以外の相続手続きを先に進めることはできます。
しかし、株式の詳細が不明では、相続税の申告の必要がある場合は困ることになります。また、配当金が振り込まれる銀行口座も相続手続きにより閉鎖されてしまいます。
銘柄や株式数によっては相続財産としての価値が大きくなる場合があります。出来るだけ早急に取引証券会社を特定して相続手続きを進める必要があります。
開示請求などの対応で不安ある方は相続を専門にしている司法書士などにご相談ください。相続人に代わって開示請求を行って証券会社を特定し、株式の相続手続きを行ってくれると思います。