「遺産分割協議書」の書き方が悪いと「相続登記」できない場合があるのですか
相続が発生して亡くなった親名義の実家などの名義変更 (「相続登記」)をする場合、遺言書がなければ、相続人全員による「遺産分割協議書」を作成する必要があります。ところで、遺産分割協議が円満に行われても遺産分割協議書の書き方が悪いと肝心の相続登記ができないことがあります。
今回は遺産分割協議書の書き方が悪いと登記所 (法務局) で相続登記ができないケースについて見ていきます。

( 遺産分割協議書の役割 )
相続による不動産の名義変更 (相続登記) を行うには、名義変更の根拠資料が必要になります。戸籍などの公的書類も根拠資料の1つです。そして、遺産分割協議書は特に重要な根拠資料となります。
遺産分割協議書は相続人全員による遺産分割の合意を証する資料として相続登記の重要な根拠資料となります。内容や形式に不備があると登記所 (法務局) で相続登記の申請が受理されません。
それでは、書き方が原因で相続登記ができないケースについて順に見ていきます。

( 不動産の表示が不正確な場合 )
相続登記では相続不動産を登記簿どおりに特定する必要があります。よくあるダメなケースとしては、次のようなものです。
① 「〇〇市の土地」「裏の畑」「道路沿いの土地」「裏山」など曖昧な記載
※相続人の間では理解できても登記をする登記官には理解されません。
② 地番や家屋番号が書かれていないもの
③ 所在の表示が住居表示で書いてあるもの
※普段使っている「住所」は住居表示上の住所です。登記は「地番」をもとに特定します。住所と地番は全く別のものです。
このようなことにならない対策としては、必ず不動産の「登記事項証明書」を法務局で取得してその記載通りに書く必要があります。

( 誰が取得するかが不明確な書き方の場合 )
相続登記は誰が取得(相続)するか明確にする必要があります。問題のあるケースは次のような書き方です。
① 「長男が相続する」とだけ書いてあるもの
※長男の住所や氏名が書かれていないと相続する者を特定できません。
② 複数人で共有する場合の持分割合が書いていないもの
※相続登記は誰がどの持分割合で取得するか明確にする必要があります。
対策としては、相続する名義人を明確に特定し、持分なども明確にする必要があります。

( 相続人全員の合意がない場合 )
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要となります。よくあるケースとして次のようなものがあります。
① 一部の相続人の署名捺印がないもの
※相続人の1人でありながら遺産分割協議書に相続人として記載されていない場合も含みます。意図的に外した場合はもちろんですが、被相続人が過去に認知した子や養子とした子など他の相続人が知らない場合も含みます。
② 印鑑が実印でなく認印で押しているもの
※遺産分割協議書は相続人の意思確認のため実印を使用します。そして印鑑証明書を付けて証明します。そのため、実印で押してあっても印鑑証明書が付いていなければ受理されません。
③ 実印として押した印影が印鑑証明書の印影と相違しているもの
※印鑑を複数所持している場合、実印とよく似た印鑑が存在することがあります。押印にあたっては十分に注意する必要があります。
④ 遺産分割協議書に記載した相続人の住所が印鑑証明書の住所と相違しているもの
対策としては、戸籍の調査を十分行って相続人全員を漏れなく特定します。そして、相続人全員を遺産分割協議書の協議対象者として記載して、印鑑証明書に登録されている実印で押印する必要があります。住所も印鑑証明書の記載通りに記載します。

( 被相続人や相続人の特定情報が不正確・曖昧な場合 )
遺産分割協議書には被相続人や相続人を正確に特定する必要があります。この特定が不十分なケースとして、次のような例があります。
① 被相続人の死亡日が書かれていない、または間違っているもの
② 被相続人の本籍地や住所の記載が書かれていない、または間違っているもの
③ 相続人の住所が書かれていない、または誤っているもの
対策としては、遺産分割協議書に書く内容は戸籍や住民票などを見て正確に記載する必要があります。

( 協議内容に「曖昧」な点がある場合 )
遺産分割協議書は確定的に記載する必要があります。確定的に書かれていないケースとして次のようなものがあります。
① 「将来売却した場合は~」など条件付のもの
※登記所では条件付の協議書では条件が成就したかどうか不明ですので登記を受け付けてくれません。
② 「~については別途協議の上定める」など未確定のもの
※登記所では未確定の状態では登記を受け付けてくれません。
対策として、相続登記は確定的な権利の移転しか扱えないため、曖昧・条件付きの表現はは避ける必要があります。

( 「日付」の記載がおかしい場合 )
遺産分割協議書には協議した日付を記載します。この日付について疑問が生じる場合は登記の申請が受理されません。次のような例があります。
① 協議日の記載がないもの
② 協議日が被相続人の死亡前の日となっているもの
③ 協議日が登記申請日より後の日となっているもの
相続登記を申請する場合、申請書や委任状、遺産分割協議書など色々な書類が存在します。それぞれの書類の作成日間の前後関係がおかしい場合は登記は受理されません。
対策としては、日付の有無や書類間の前後関係をよく確認して記載することです。

( 修正方法が間違っている場合 )
遺産分割協議書を書いてから不備に気づくことがあります。この場合、いい加減な訂正方法で修正すると登記申請は認められません。次のようなケースがあります。
① 加除訂正の方法がとられていないもの
※相続人全員の訂正印を押して加除訂正の方式に従って正確に修正をする必要があります。
② 修正箇所が多すぎて信ぴょう性に疑問が生じるもの
※あまり多くの修正をすると遺産分割協議書自体の信ぴょう性に疑問が生じます。登記手続き上は適切な加除訂正がなされていれば複数個所の修正でも登記は通りますが、相続人間で後日の紛争の火種になる恐れがあります。
対策としては、出来れば書き直した方が安全ということになります。

( まとめ )
相続登記に添付する遺産分割協議書のフォーマットは自由です。白紙から自由に記載することができます。但し、不動産登記の世界で「登記できるか」という観点では非常に形式が重視されます。
一字一句が登記に影響するので極めて慎重に記載する必要があります。登記事項証明書や戸籍や住民票などの公的書類を見て正確に記載する必要があります。特に氏名や住所に使われている漢字の表記についても慎重に「丸写し」する必要があります。
不安な場合は、司法書士に事前にチェックしてもらってください。


