「著作権」を相続させることはできますか

著作権は作品を創作した者が有する権利です。作者の思想や感情が創作的に表現された文芸・学術・美術・音楽などを「著作物」といい、創作した者を「著作者」といいます。

そして、著作者は、著作物に関して法が定めた各種権利を有しています。この権利には、例えば、著作物を複製する権利などがあります。著作者が著作物の上に有するこの各種権利の束のことを「著作権」と言います。


また、著作者は著作物がどのように使用されるをか決めることのできる権利も有しています。具体的には、①未公表の著作物を公表するか否か、公表する場合はいつどのような形で公表するか決定する権利、②著作物の現作品に又はその著作物を公衆へ提供する場合に著作者名を表示するか否かを決定する権利、③著作物及びその題号(タイトル)の同一性を保持する権利、があります。これらの権利を総称して「著作者人格権」と言います。

( 著作権及び著作者人格権の相続について )

著作権は財産権と考えられているので「相続」の対象になります。もちろん、遺言書で他人に「遺贈」することもできます。このとき著作権が共同相続され共有状態になると面倒な状況になります。共同相続人の1人が自分の著作権の持分を譲渡しようとする場合、他の相続人の同意が必要になります。また、著作権を行使するにも他の相続人の同意が必要になります。

そのため、著作権を相続する場合は、単独相続が望ましいことになります。遺言で承継を行う場合も特定の個人に遺贈又は相続させることが望ましいと言えます。

一方、著作者人格権は相続の対象になりません。民法では亡くなった方の一身に専属した権利(「一身専属権」と言います)は相続することができないとされていますが、著作者人格権はこの一身専属権にあたるからです。また、同様の理由で遺贈することもできません。


( 著作者人格権に対する保護 )

著作者人格権は相続されませんので、著作者の死後、亡くなった著作者の著作者人格権を侵害するような行為が起きた場合、相続人が何もできないことになります。そのため著作権法では、著作者の「遺族」に一定の権利を認めています。

具体的には、著作者人格権に基づき、差し止請求及び名誉もしくは声望を回復するために適当な措置を請求することを認めています。なお、この権利を行使できるのは「遺族」であり「相続人」ではありません。

ここで言う「遺族」とは、配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹です。相続人より範囲が広いため、相続人ではない孫や兄弟姉妹も請求できることになります。(尚、請求できる順位は遺族の順位と同一になります。)

また著作者に親族がいないなどの理由で、死後、著作者人格権に基づく措置を請求できる遺族がいない場合は、遺言書で第三者を請求権者を指定しておくことができます。尚、この取扱は遺族がいる場合でも遺言書で請求権者を指定することができます。


( 遺言書で著作権を相続させる場合 )

遺言書で著作権関係の権利を相続させる場合、著作権は相続させることができますが、著作者人格権は相続させることができません。しかし、亡くなった著作者の名誉や声望を守るために必要な措置を講じることのできるように請求権者を明確にしておいた方が良いことになります。

つまり、あらかじめ遺言書に請求権者を明示することによって、万一、好ましくない事象が発生した場合、速やかに対処できるようにしておくものです。

<遺言書の条項例>

第○条 遺言者は、次の著作権を遺言者の長男○○(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。

(著作物の表示)

  著作物の種類  小説
  著作物の題号  幸せの青い道
  著  作  者   山田太郎

第○条 遺言者は、前条に規定する著作物に係る著作者人格権に基づき、差止請求及び名誉若しくは声望を回復するために適当な措置の請求をすることができる者として、遺言者の長男○○を指定する。


( 著作権に対する対抗要件の付与について )

平成30年の相続法の改正による著作権法の改正によって、法定相続分を越えて著作権を相続した相続人は、その超える部分について登録しなければ第三者に対抗できないこととなりました。

そのため、遺産分割、相続分の指定及び相続させる旨の遺言により法定相続分を超えて著作権を相続した場合は、速やかに著作権の登録を行う必要があります。この取扱は、令和元年7月11日から施行されていすので、この日以降に発生した相続などについて適用されます。


(まとめ)

著作権を相続することは滅多にないかもしれません。しかし、最近はネット小説など一般の方が気軽に著作物と呼ばれる作品を創作できる時代となっています。何が著作物にあたるのか、著作物として認めてもらうにはどのような手続きが必要かなど創作的な活動をされている方は勉強する必要があります。

ユーチューブ動画に著作権は認められるのかなど身近な問題と絡めて勉強して見ると面白いかもしれません。

 

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