「相続に関する相談先」はどこが良いですか。また専門家の報酬相場も教えてください。
相続に関して悩みごとがある場合どこに相談すれば良いのでしょうか。そもそも相続に関して何が問題で何を相談して良いかが分からない場合もあります。また、専門家に相談したくても相談できる専門家の心当たりがないこともあります。
このようなときは、まず、相続に関して抱えている問題を整理する意味で、無料で安心して利用できる市区町村が定期的に行っている「無料相談会」を活用すべきです。市区町村のホームページで相談日を確認した上で予約して相談すれば良いと思います。
相談内容がある程度明確になっている場合は、管轄の官公署などに相談すれば良いと思います。相続登記については各地の法務局や司法書士会などの無料相談窓口、相続税関係であれば各地の税務署や税理士会などの無料相談窓口です。相続争いがある場合は、各地の家庭裁判所や弁護士会の無料相談窓口です。
専門家に有償で相談したい場合は、弁護士や税理士、司法書士などが相談先になります。相談する専門家は、相続に紛争性があれば弁護士に、相続税の申告が必要な場合は税理士に、相続財産に不動産があれば司法書士に相談すれば良いと思います。
但し、専門家に相談をする場合どうしても費用や報酬が心配になります。現在、これら専門家の報酬は自由化されていますので統一的な基準はありません。そのため、簡単には相談に踏み切れない場合が多いと思います。
今回は、相続の専門家に依頼した場合の費用や報酬について見て行きたいと思います。
( 専門家別の費用・報酬について )
相続の専門家はそれぞれのホームページなどで費用や報酬を明示しています。費用・報酬についてはそれを見て判断すれば良いのですが、人生で1~2回程度しか経験しない相続について「相場観」がありません。
そこで、日本を代表する銀行である「三菱UFJ銀行」がホームページで公開している「そうぞくガイド」にこれら専門家の報酬・費用の目安が掲載されていましたので紹介します。( あまり関係ありませんが、この「そうぞくガイド」は2024年度の「グットデザイン賞」を受賞しています。)
メガバンクが掲載している情報ですので、各専門家がマーケティングとして公表している広告宣伝文句よりも信頼性があると思います。1つの参考情報として活用してもらいたいと思います。専門家別に順に見て行きます。
(1) 弁護士
「着手金+報酬金」に分けて報酬を請求する法律事務所が多いとのことです。その中でも、着手金は、相続財産の数%として、報酬金は着手金の2倍程度とする法律事務所も多いとのことです。
また、着手金は数十万円程度の固定として、報酬金を相続財産の数%から10数%とする法律事務所もあるとのことです。
また、着手金と報酬に加えて、弁護士が事務所から出張した場合に数万円程度の「日当」を請求する法律事務所が多いとのことです。
◆ これによれば、例えば、相続財産の総額が5,000万円程度であれば、5,000万円の3%から10数%の費用・報酬が掛かることになり、150万円から500万円以上ということになります。
(2) 税理士
相続財産の0.7%から1%程度を「基本報酬」とし、相続人の数が多い場合、財産評価が難しい遺産 (非上場株式や不動産) がある場合、相続税の申告・納付期限が迫ってからの依頼の場合は、追加報酬を請求するところが多いとのことです。
◆ これによれば、例えば、相続財産の総額が5,000万円程度であれば、5,000万円の0.7%から1%程度である35万円から50万円が基本報酬として必要になります。そして、相続人の数や相続する遺産の種類に応じて加算がされることになります。また、相続税の申告期限である亡くなってから10か月以内という期限の間際、例えば、2か月前に依頼する場合は「特急料金」が加算されるということです。
(3) 司法書士
相続手続の種類ごとに報酬が決められている司法書士事務所が多く、相続人の数や登記する物件の数の多寡によって報酬額の総額が増加するところが多いとのことです。
<依頼内容> 報酬相場
登記簿調査 1,000円~5,000円
固定資産税評価額の調査 1,000円~5,000円
戸籍収集 1~3万円
遺産分割協議書作成 1~5万円
登記申請 5~8万円
◆これによれば、自宅不動産の相続登記を依頼する場合は、通常、登記簿の調査を行い、固定資産税評価額の調査を行い、戸籍収集後、遺産分割協議書を作成して登記申請しますので、合計金額である8万円から17万円程度ということになります。戸籍を自分で収集すればその分安くなると思います。
尚、この「そうぞくガイド」でガイダンスしているのは、ごく標準的な相続のケースを想定していると思います。例えば、亡くなったのが何十年も前で相続人の数が何十人もいるような場合や相続人の中に行方不明の方がいるとか、相続人の中に認知症の方がいて意思表示が困難な場合や、相続する財産が非常に多い場合など色々なケースがあります。このような場合は、それに応じた費用・報酬の加算が当然になされると思います。
また、今回紹介した専門家以外に相続や終活業務を行っている専門家はいます。行政書士、相続診断士、相続アドバイザー、相続士、相続鑑定士、相続カウンセラー、相続法務指導員、相続マイスター、相続支援コンサルタント、相続ファシリテーター、相続管理士、相続対策プランナー、相続実務コンサルタント、相続コーディネート実務士など色々あります。
行政書士は国家資格ですが、他は民間の任意団体が認定した民間資格です。これらの専門家は相続に関する相談に応じて相続問題の解決をします。そして、これら専門家自身に法律の定めに依り問題解決の権限がない事柄については、権限を持った専門家に再依頼することになります。
例えば、遺産分割に紛争性があれば弁護士、相続税の申告が必要であれば税理士、不動産の名義変更が必要であれば司法書士、に業務を委託します。それら専門家との間の中継役を担当することによって「コンサルタント料」等を得ていることが多いと思います。
従って、直接権限のある専門家に依頼するよりも余分な中間マージンを支払うことになる恐れがあるので注意が必要です。また、権限のある専門家に依頼する場合でも葬儀社、介護施設、銀行等から専門家を紹介される場合もありますが、紹介料などが発生していると割高になります。
( まとめ )
今回は、相続の相談先について見てきました。相続の相談を受けていますと「何を相談して良いか分からない」、「何から検討すれば良いか から教えてほしい」というような、全く手探り状態で相談に見える方もいます。
このような場合は、無料の相談会などで問題の整理をしてもらってください。少し整理して道筋をガイドしてもらうだけでも随分気持ちが楽になります。その後、必要な情報を書籍やネットなどで収集すれば良いと思います。
その結果、自分では対応が難しいと判断した場合は、それぞれの専門家に依頼すれば良いと思います。専門家によって費用・報酬が異なりますのでよく判断して選択してもらいたいと思います。