息子や娘が結婚したら宅地を「贈与」したいと考えています。注意点はありますか。
子が結婚したら不動産をお祝いに贈与したいと考える場合があります。このように、今現在贈与するのではなく、子が将来結婚したら贈与するという思いを形にしたいと考える場合です。贈与契約書を作成して対応しようと考えている場合、何か注意すべきことはないか気になります。
子が将来結婚したら贈与するとする契約は「条件付贈与契約」と言います。子が結婚しなければ条件は成就しないため贈与契約の効力は発生しない契約です。今回は、「条件付贈与契約」について考えてみたいと思います。

( 贈与税の発生時期 )
不動産などの資産価値のあるものを生前に贈与する場合、贈与税の発生が気になります。「子が結婚したら」不動産を贈与するという契約は、結婚という条件が成就したときに効力が発生します。そのため、親と子が贈与契約をした時点では効力は発生せず贈与税は発生しません。将来、子が結婚した時に贈与税は発生します。
また、贈与税を計算するときに必要となる不動産の課税価格は、土地の価格が値上がりしている場合など、いつの時点の価格で算定するか気になります。今回の条件付贈与契約の場合は、条件の成就した時である結婚した時の価格を基準にして算定されます。
なお、価格の算定に当たっては、子が結婚した時の不動産の相続税評価額を基準にして行います。贈与税は相続税の前倒し的な税ですので相続税の評価額で計算します。不動産の場合は、路線価 (路線価以外の場合は倍率方式)を基に計算します。

( 贈与税の申告時期 )
子が結婚したら贈与の条件が成就しますので、その翌年に贈与税の申告を行う必要があります。「暦年課税贈与」の適用を受ける場合は、毎年の非課税枠である110万円を超える部分につい贈与税を納付する必要があります。
「相続時精算課税」を活用する場合は、不動産の評価額のうち2,610万円まで非課税で贈与することができます。但し、この場合は、相続時に不動産の贈与を受けた年の不動産の評価額から110万円を控除した金額を相続財産に加算して相続税の計算をする必要があります。
なお、父母や祖父母などの直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築などの対価に充てるための資金を取得した場合、一定の要件を満たせば、贈与税が非課税となる特例があります。しかし、宅地などの土地だけの贈与の場合には本特例は適用できませんので注意が必要です。
また、贈与した宅地が贈与者の居宅の敷地であった場合、贈与者が亡くなった際、居住の用に供されていた宅地に係る「小規模宅地特例」の適用が相続発生時に受けられないので併せて注意が必要です。小規模宅地特例は、相続税の計算上、被相続人が住んでいた宅地などについて評価額を最大80%削減できる制度です。宅地を生前贈与で取得した場合は適用要件を満たさないので注意が必要です。
いずれにしても、贈与税について不安がある場合は税理士や税務署などに確認することが必要です。

( 贈与契約書作成上の注意点 )
子が結婚したら宅地などを贈与する旨を贈与契約書に記載します。不動産の特定方法は、登記事項証明書に記載されている情報どおり正確に記載します。
また、不動産の名義変更である「所有権移転登記」や「公租公課の負担」についても記載しておいた方が良いと思います。
所有権移転登記にともなう司法書士報酬や登録免許税などの費用について、親から必要な現金の贈与を受ける場合は、別途、贈与契約書を作成します。
不動産の贈与契約書には200円の印紙を貼付する必要があります。現金の贈与契約書には印紙の貼付は不要です。

( 贈与契約書の見本 )
贈与契約書の一例を掲示します。
贈与契約書
贈与者 山田太郎 (以下「甲」という。) と受贈者 山田一郎 (以下「乙」という。)は、次のとおり贈与契約を締結した。
第1条 甲は、乙が結婚した場合には、その所有する後記不動産を以下に定める約定に従い乙に贈与するものとし、乙はこれを承諾した。
第2条 甲は前条に該当した場合には、乙に対して、遅滞なく後記不動産の所有権移転登記手続及びその引渡しを行う。
第3条 前条の所有権移転登記に必要な一切の費用は乙が負担する。
第4条 本件不動産に係る公租公課の負担は、所有権移転登記の日を基準とする。すなわち、登記の日にまでに相当する部分は甲の負担とし、その翌日以降に相当する部分は乙の負担とする。
上記のとおり契約したので、本書2通を作成し、甲乙各自署名捺印の上、各自その1通を保有する。
令和8年3月3日
〇〇県〇〇市〇〇町1丁目23番地
贈与者(甲) 山田太郎 印
〇〇県〇〇市〇〇町2丁目34番地
受贈者(乙) 山田一郎 印
記
不動産の表示
所 在 〇〇県〇〇市〇〇町1丁目
地 番 23番
地 目 宅地
地 積 123.45㎡

(まとめ)
子の将来の結婚などを契機に不動産を贈与するケースについて見てきました。これ以外にも子が有名大学に入学した場合や医師免許を取得した場合などの条件をクリアした場合に贈与する場合もあると思います
贈与契約を締結したい場合で不安のある場合は、司法書士や税理士などに相談ください。贈与契約の作成にあたって色々なアドバイスをしてもらえると思います。


