東京証券取引所でシステム障害発生。株取引一時不安定な状況に

東京証券取引所で10月9日、株取引などの売買システムに障害が発生しました。売買停止にはなりませんでしたが、野村証券やみずほ証券などの大手証券会社などで一時注文の受付ができなくなり、顧客に影響が出ました。東京証券取引所では、従来からシステム障害が発生しており、その都度対策を打って来たはずでした。今回、再び想定外のトラブルに見舞われ、新たな対策を迫られる格好となっています。

東京証券所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)によると、特定の証券会社から大量の電子データが誤送信され、処理能力を上回ったことが原因だったと発表しました。特定の証券会社は、一部報道によると、外資系証券会社であるメリルリンチ日本証券みたいです。

詳しいトラブルの様子は、10月9日午前7時32分ごろ、証券会社の1社から通常の1千倍近い量の電文が数十秒間にわたり東証の売買システムに送られたようです。東証のシステムでは、各証券会社からの注文データを負荷分散の為に4つの回線で受け取る仕組みとなっています。

今回、通常の千倍近い大量の異常データが1本の回線に集中して送信された為、システムは異常を検知して、該当の回線を切断(データの接続を停止)したものと思われます。これは、大規模なシステムが通常保有する障害対応機能であり、家庭にある電気のブレーカーの様なものと思ってもらっても良いと思います。過剰電流が流れればブレーカーは落ちて回線は切れます。

ここまでは、システムはある意味、正常な動作をしました。しかし、問題はこのような事態に備えて、大規模なシステムでは、特定の回線の障害を検知した段階で別の正常な回線に切り替えることのできる機能を備えているはずです。

今回のJPXの発表によると、障害を検知した段階で東証は、証券各社に対して正常に稼働している他の3回線を使用するように通知をしたようですが、証券各社への切り替えがスムーズにいかなかった模様です。

多くの証券会社では、注文をさばき切れず、昼の段階で顧客の注文を一旦止めて、午後から再開する措置を取りました。株等の売買は、1分1秒を争う取引ですので、このようなトラブルは日本の証券市場の信用を失墜することになりかねません。

 

各証券会社のシステムは、4つの接続回線の負荷分散を図る為に、各社のシステムと東証のシステムを接続する朝一番で、回線の接続確認を行う仕組みになっていると思います。確認方法は、各証券会社のシステムから確認用の電文を東証のシステムに送信して正常に接続できることを確認する仕組みと思われます。今回の事故は、特定1社による確認電文が異常で且つ大量であったことによります。

東証のシステムの詳細は分かりませんが、今回の障害の発生をシステム的に見るといくつかの疑問点があります。1つは、株式売買等の高度な信頼性が要求される決済システムの障害対策機能として、回線障害を検知した段階で、システムが自動で正常な回線に切り替えが出来ない点です。

今回のJPXの説明によれば、各証券会社に回線障害を通知して、各社の接続変更が行われています。こんな手動対応を本当にやっているのでしょうか。通常であれば、システムによる自動切り替えが行われるケースだと思います。障害を検知したら、ほぼ即座に切り替わるのが普通ではないでしょうか。

この点は、なにか証券売買や証券業界の特異な事情があるのかもしれませんので深入りしませんが、最大の疑問点は、手動切り替え処理に時間を要した点です。自動切り替え機能が実装されていないのであれば、手動切り替えは十分な機能確認と定期的な訓練の実施が必須と考えます。切り替えに各社がもたついたのは、どうなっているのでしょうか。

証券会社を始めとして銀行等の金融機関のシステムは人々の決済機能を担っていますので、万全の上にも万全の態勢でシステムの維持管理をしてもらいたいと思います。

なお、多くのシステムのトラブルは、連休明けに起こります。今回も三連休明けです。これは、連休中にシステムの改良工事を行う為です。正月や5月の連休、お盆明けなど連中明けには少し注意が必要だと思います。

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