線状降水帯の上空から測定機の投下
近年その被害が年々拡大している集中豪雨の観測と予測精度向上のため、名古屋大学宇宙地球環境研究所の研究チームは、線状降水帯の発生が予想される海上に航空機を飛ばして、観測機器を投下し水蒸気の発生量などを正確に測定する実験を開始しました。
同研究所では、既に巨大な台風である「スーパー台風」について、その上空より航空機から観測機器を投下して、温度や気圧、風速など詳細なデータの収集作業を行っており、台風の目の中の撮影にも成功しています。
今回投下される観測機器は、「ドロップゾンデ」といわれる機器で、海上に30個程度投下し、気温や湿度、気圧などを測定し海上の水蒸気量を正確に計算するとのことです。巨大な線状降水帯が発生する前には、海上の水蒸気量が上昇することから、どの程度の水蒸気量があれば、線状降水帯になり得るのかについてのデータを収集するのだと思います。
一定程度のデータが収集できれば、線状降水帯の発生メカニズムが解明され、より精度の高い発生予測が可能になることが期待されます。その意味で、大変有意義な研究だと思います。
但し、問題は費用がかかることです。1回の観測で1千万円から2千万円の費用がかかる為、観測実験が年1回程度しかできない点です。台風の観測にも費用がかかりますので、大学の研究予算確保が苦しくなっているのでしょう。
我が国の最大の関心事の1つは、自然災害対策だと思います。経済問題や外交問題も極めて重要ですが、最近の自然災害の発生状況は、想像を遥かに超える状況となっており、復興対策費用も年々増加しています。
南海トラフ等の巨大地震が発生すれば、被害予想額は国家予算を遥かに超えることが想定されています。スーパー台風は年々巨大化しており、いずれ日本を直撃することが予想されています。西日本豪雨に見られるように、その被害は過去に発生した大雨の被害を完全に凌駕したものとなっています
このような状況の中で自然災害の予測や被害の極小化に対する研究・開発に予算をもっと投下してほしいと思います。発生したときの被害額から考えれば、ある程度の予算を投下しても、結果として元が取れることになると思います。
自然災害への研究開発は、民間企業が投資することは、収益への貢献が見えない為、現実的には難しいと思います。ここはやはり、国が予算を積極的に配分すべきだと思います。東京五輪も大切ですが、人々の生活を一瞬にして足元から崩壊させる自然災害の対策となる研究開発に多額の予算をお願いしたいと思います。