離婚後の「父母共同親権」が令和8年4月1日から施行されます
離婚後も父母の双方が親権を持つことのできる「父母共同親権」が、来年4月1日から導入されることが令和7年10月31日の閣議で決定されました。これにより、父母の離婚後の親権者の定め方の選択肢が広がり、離婚後の父母双方を親権者と定めることができるようになります。

( 離婚後の親権者の定め方 )
離婚後の子の親権者の定め方は、離婚形態の区別により次のとおりとなります。
(1) 協議離婚の場合
父母がその協議により離婚した場合、子の親権者を父母双方とするか、その一方とするか定める必要があります。

(2) 協議が整わない場合や裁判離婚の場合
家庭裁判所が父母と子の関係や父と母の関係などの様々な事情を考慮して、子の利益の観点から、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。家庭裁判所は裁判をするにあたって、父母それぞれの意見を聴く必要があります。また、子の意思を把握するように努める必要もあります。
なお、次のようなケースでは、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをします。
① 虐待の恐れが認められるとき
② DVの恐れその他の事情により、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき

( 親権者の変更 )
離婚に伴って一度定めた親権者の指定について、その後の状況によって親権者の変更をすることができます。離婚後の親権者の変更は、当事者が勝手に行うことはできず、家庭裁判所による変更手続きが必要となります。
家庭裁判所は、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所が、子からの請求やその親族からの請求によって、親権者の変更をすることができます。この場合の変更方法としては、父母の一方から他の一方、一方から双方、双方から一方への変更があります。
離婚時の親権者の指定方法の協議において、一方からの暴力や詐欺的な行為があり、対等な立場での合意形成が図られていないといった場合など、子の不利益になる恐れがあるときは、この手続きによって親権者の変更をすることができます。

( 共同親権の行使方法 )
父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールが明確化されています。
(1) 親権は、父母が共同して行います。但し、父母の一方が親権を行うことができないときは他方が行います。
例えば、父母の一方が入院していて親権を行使できない場合、父母の一方が行方不明である場合など、事実上、親権を行使できない場合は他方が親権を行使します。
(2) 次のような場合は、親権の単独行使ができます。
■ 監護教育に関する日常の行為をするとき
日常生活の中で生じる監護教育に関する行為で、子に重大な影響を与えないもの。子の置かれた家庭環境にもよりますが、具体的には次のような行為が該当します。
・食事や服装の決定
・短期間の観光目的での旅行
・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定
・通常のワクチンの接種
・習い事
・高校生の放課後のアルバイトの許可
なお、次のような行為は日常の行為に該当しないとされています。つまり、共同で親権行使をする必要があります。
・子の転居
・進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職するなどの判断含む)
・心身に重大な影響を与える医療行為の決定
・財産の管理(預貯口座の開設など)
■ 子の利益のために窮迫の事情があるとき
父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、子の利益を害する恐れがある場合です。窮迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行うことができます。
具体的な行為は、色々な事情により異なりますが、次のような行為が該当するとされています。
・DVや虐待からの避難をする必要がある場合 (子の転居などを含みます) 被害直後に限らないとされています。
・子に緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
・入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っているような場合

( 親権行使者の指定 )
父母が共同して親権を行うべき特定の行為について、父母の意見が対立するときは、家庭裁判所が、父または母の請求により、父母の一方を当該事項にかかる親権行使者に指定することができます。親権行使者は、その事項について、単独で親権を行使することができます。

(まとめ)
離婚時、父母共同親権が選択肢として選ぶことができるようになります。離婚した夫婦が子に対して継続的に親権を保持できることから、親としての立場を継続しやすくなります。
しかし、共同で親権を行使するといっても父母が一緒に生活しているわけではないので、実際の日常生活における子の監護や教育について難しい問題が生じる可能性があります。

