新型コロナウィルスの治療薬として「アビガン」に期待か
中国政府は、令和2年3月17日、新型コロナウイルス患者を対象に行った臨床研究の結果を公表しました。それによると日本の製薬会社(富士フィルム富山化学株式会社)が開発したインフルエンザ治療薬「アビガン」(一般名「ファビピラビル」)に治療効果が認められ、明らかな副作用もみられなかったことが報告されました。今後は医療現場で治療薬の1つとして使用を勧めていく方針であることも明らかにしました。
アビガンを開発した富士フィルム富山化学株式会社のホームページ上の説明によれば、アビガンは、『他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品である。』とされています。
つまり、本剤は毎年流行が発生するインフルエンザ対策として開発したものではなく、将来、未知の新型インフルエンザが発生し、有効な治療薬がない場合に備えて開発したものです。ウィルスに対する耐性の発生を防ぐため、開発しても一度も使用せず将来に備えて蓄えていたものです。そのため、『新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対する本剤の投与経験はない。』としています。
本剤の副作用、臨床成績等の情報については、承認用法及び用量より低用量で実施した国内臨床試験に加え海外での臨床成績に基づき作成されているとのことです。
このアビガンが、中国の新型コロナウィルス患者に対して投与され臨床研究が行われました。そして、有用な臨床情報が集積されました。
臨床研究は、医療機関によって、湖北省武漢で240人、広東省深センで80人の患者を対象に行われました。このうち深センでは「アビガン」を投与しなかった場合は、ウイルス検査の結果が陽性から陰性になる日数の中央値が11日だったのに対し、投与した患者では4日に短縮されたということです。また、エックス線の画像で肺炎の症状の改善が認められた患者の割合は、「アビガン」を投与した場合は91%と、投与しなかった場合の62%より高かったとしています。
この臨床結果を受けて、中国の当局担当者は、アビガンは「安全性が高く、効果も明らかで正式に推薦する」と述べ、治療薬の1つとして医療現場で使用を勧めていく方針であることを明らかにしました。
これを受けてアビガンの有効成分「ファビピラビル」に関するライセンス契約を富士フイルムと2016年に結んだ中国の製薬大手・浙江海正薬業が、後発医薬品を量産する方針と伝えられています。また、同社は先月、中国国家薬品監督管理局から認可も取得しているとのことです。
アビガンは日本でも先月から患者への投与が始まっています。日本での臨床成果が次第に明らかになってくると思います。有効な治療薬としての効能が確認できれば、できる限り早急に厚生労働省は正式の治療薬として日本での使用を認可して頂きたいと思います。
新型コロナウィルスは、8割程度の方が感染しても軽症で済むと言われていますが、新型のウィルスのため、誰も体に抗体を持っていないため、感染して重篤化される方も出てきます。高齢者や持病のある方にとっては、大変恐ろしいウィルスということになります。
今回のアビガン以外にも既存薬で効能が期待できるものもあるようです。早急に臨床結果を取りまとめて正式の治療薬として活用できる道を探ってもらいたいと思います。
治療薬の柱となるものが1つでもできれば、多くの人々の安心感も広がり、ウィルスに対する対応態勢も色々と工夫ができると思います。正式の治療薬が一刻も早く認められることを願っています。