気象庁、新スーパーコンピュータによる豪雨・台風予想開始

気象庁は、6月5日から従来のおよそ10倍の計算能力を持つスーパーコンピュータを導入し、直ちに運用を開始すると発表しました。豪雨予想や台風の進路予想など精度が大幅に向上することが期待されます。

ここ最近の異常気象による、集中豪雨や巨大台風の発生による大規模災害の被害は、年々地球規模で激しさが増しているように感じています。地球温暖化の進行が地球全体の気候条件に変更をきたし、過去の気象データの解析をベースとした従来型の気象予報システムでは、十分な成果が得られなくなりつつある様に感じています。

「今回の豪雨は、過去100年に1度の事象です。」「このような豪雨は、過去経験がありません。」と頻繁にテレビで悪天候による災害のニュースが報道されています。過去のデータからの予想手法が最近限界に近づいているのではないでしょうか。

このスーパーコンピューターは、東京・清瀬市の「気象衛星センター」に設置されます。

ハードのスーパーコンピューターは、世界的スーパーコンピュータメーカーである米国のクレイ社製です。この上で稼働する気象予報システムの稼働環境構築を日立製作所が担当しています。気象予報システムの業務アプリケーション(「数値予報モデル」)は、気象庁が開発しています。

スーパーコンピュータというものは、ハード本体と業務アプリケーションがあれば稼働するという単純なものではありません。スーパーコンピュータの処理能力を限界まで引き出すために「システム稼働環境の構築」が極めて重要になります。今回はこの部分を日立製作所が担当しています。

日立製作所の発表によると、従来システム比約21倍となる世界トップクラスの総理論演算性能 約18PFLOPS(ペタフロップス※1) を有する大規模システムを設計・構築し、気象観測の技術発展にともない飛躍的に増加している観測データを、気象庁が開発した「数値予報モデル」で高速かつ最適に計算できるシステム環境を提供しているとのことです。

※1 18PFLOPS‥1秒間に1京8000兆回の処理能力

今回の新システムの導入によって、従来、詳細な雨の予測が6時間先までのものが、15時間先まで可能となります。発達した雨雲が線状に連なって大雨をもたらす「線状降水帯」の発生などを予測できる可能性が高まるということです。これにより、台風の影響や集中豪雨による被害予想を早期に確認することができ、地方自治体による避難誘導の迅速化が図られると思われます。

また、2019年前半には、台風の進路予想を従来の3日先から5日先まで可能になるとのことです。この中で、これまでの進路予想に加え、中心気圧や最大風速、最大瞬間風速、それに暴風警戒域の予測ができるようになるということです。

このほか、農作物の管理や気温が影響するビジネスなどに生かしてもらうため、これまで1週間先までだった各地の気温の予報を2週間先まで延長し、平均気温の推移を予測して発表する「2週間気温予報」を来年6月ごろから始めることにしていています。

さらに、降水の分布が従来の5キロ四方の細かさから1キロ四方の細かさまでわかるようになります。この細かなメッシュによる「降水短時間予報」が、6時間先から15時間先まで可能になり、情報は6月下旬からホームページで公開される予定です。

黄砂の予測も改善されます。現行のシステムでは全国の各観測地点ごとにしか分からないが、気象衛星ひまわりの観測データを新たに活用し、地図で把握できるようになります。表示する範囲も、黄砂が発生する中国大陸まで広げられます。

このように新システムの導入によって人々の暮らし方にも大きな影響が予想されます。前日の夕方の時点で翌朝に大雨になりそうな地域が把握できるようになることから、人々の行動予定管理に大きな影響を与えます。仕事でもプライベートでも気象情報確認の重要性が増すことになるでしょう。

企業も気象天候情報による売上増減予想の精度向上は、営業活動にとって死活問題ですので、このシステムの恩恵をさらに期待していると思います。

この新しい気象予報システムは、どこにも書かれてはいませんが、恐らく世界一の性能・精度ではないでしょうか。地震、津波、火山噴火、台風、集中豪雨と世界でも最も過酷な地理的環境にある日本だからこそ出来る世界に誇れるシステムだと思います。

 

 

 

Follow me!