シニア世代が起業するなら、断然「合同会社」その8

合同会社の定款記載事項 (前回からの続き)
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絶対的記載事項の次は、相対的記載事項の検討となります。相対的記載事項とは、会社法の条文に「〇〇〇は◆◆◆の効力を有する。但し、定款に別段の定めをすることを妨げない。」または、「〇〇は△△とする。 但し、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」等と記載されている項目に対する定めの事です。

定款で何も定めなければ、会社法の規定通りの効力が発生します。この効力を変更したい場合は、必ず定款の定めが必要となります。これが相対的記載事項のポイントです

従って、実は、この相対的記載事項の定め方が、一番工夫のいるところであり、また難しい部分でもあります。絶対的記載事項は、誰が作成してもそんなに違いは出ませんが、相対的記載事項の定め方は、まさに千差万別となります。

合同会社の相対的記載事項

具体的に何が相対的記載事項として、会社法上規定されているかというと沢山の項目があります。項目単位で見ると30以上あります。

主なものをジャンル別に見てみますと次の様になります。

持ち分の譲渡方法関連

1例として、「業務執行社員は、その持ち分を譲渡するには、他の社員全員の同意が必要」と会社法では規定しています。これを、例えば「他の社員の3分の2以上の同意が必要」などに修正することが出来ます。

但し、この修正は、単純にはできません。社員の持ち分を譲渡すると定款を変更しなければならなくなります。譲渡を受けた新しい社員の氏名・住所等が定款の絶対的記載事項ですので定款変更が必要になるからです。この定款の変更は、会社法の規定では、社員全員の同意が必要とされています。

そうすると、定款変更の条件についても「社員の3分の2以上の同意」で可能となるよう変更の必要性が生じます。このように一つの修正が他の項目の修正へと連動する必要性が生じます。これが意外と難しいと思いますし、見落とすと大事に至る恐れがあります。また、本当に定款変更を3分の2以上の同意で変更可能にして良いかどうか慎重な判断もいります。

社員の業務執行権の制約関連

会社法の定めでは、社員が複数いる場合、各社員は業務執行権を有し、且つ、会社代表権を有すると定められています。この定めを変更して、特定の者のみを業務執行社員とし、さらに特定の者のみを代表社員とする等の変更です。

以下は、項目だけ羅列しますが、検討事項は結構あります。それだけ、オーダーメイド的に設計できる会社であるというメリットでもあります。

支配人の選任・解任に関する事項
業務執行社員を定款で定めた場合、その辞任・解任、業務及び財産状況の調査に関する事項
業務執行社員の職務執行の報告に関する事項
業務執行社員と会社との関係に関する事項
競業避止義務や利益相反取引に関する事項
代表社員の互選規定に関する事項
社員の退社に関する事項
社員の持ち分の承継に関する事項
社員が死亡したり、社員としての会社が合併して消滅した場合の取り扱いです。これを相続人や合併承継会社にへの引継ぎを希望する場合は、その旨の定めが必要になります。
利益配当や損益分配に関する事項
合同会社の社員の損益分配の割合は、各社員の出資割合に応じて決まりますので、これと異なる割合としたい場合は、定めが必要になります。
出資の払い戻しに関する事項
公告方法に関する事項
通常は、官報公告とします。但し、合同会社の公告事項は、普通は、あまりないと思います。
定款変更方法に関する事項
原則、社員全員の同意が必要となります。変更する場合は、定めが必要となります。
会社の存続期間、解散、清算、残余財産や帳簿の保存に関する事項
計算書類の閲覧方法に関する事項
利益配当を請求する方法に関する事項

ということで、項目1つ1つについて詳しくは書けませんでしたが、この部分の検討が、合同会社設立時の最大の山場であると思います。設立しようとする会社の状況によって、社員の数やその親密度合い、今後の会社の発展計画などと密接に絡んで、熟慮すべき項目が多いと思います。よく考えて設計して頂きたいと思います。

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