◆認知症の方が相続人にいる場合

認知症の方の確認の必要性

(1)相続人の中にご高齢者がいる場合、認知症を既に発症されている方やその恐れのある方、あるいは病院で寝たきりで意識のない方等がお見えになる場合もあると思います。

(2)また、ご高齢でなくとも認知能力が低下されている方がお見えになる場合もあると思います。

(3)これら本人の判断能力の低下が疑われる場合、これらの方が行った遺産分割協については、たとえご本人名義の署名・捺印がされていたとしても、後日、遺産分割協議の有効な成立について疑義を挟まれる余地があります最悪の場合、裁判で無効を主張される恐れもあります。

(4)従って、相続登記を行う司法書士は、遺産分割協議書を確認する場合、署名された相続人の認知能力に疑念がある場合は、その認知能力を必ず確認することが求められています。
※認知能力に疑いがある場合、相続登記手続をお引き受けできない場合があります。

成年後見人の選任

(5)相続人の中に認知能力に疑いのある方がお見えの場合認知能力の確認を行う必要があります。認知能力に問題がある場合は、成年後見人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。
※認知能力の低下の度合いが低い(軽い)場合は、保佐人、補助人などの申立てとなります。

(6)成年後見人は、単に相続登記の為だけに選任されるものではありません。あくまでも認知症等の方(成年被後見人)の療養看護や財産管理を法的にサポートする為の職務を持って選任される者です。

(3)その為、成年後見人の選任を申立てる場合には、成年被後見人の管理すべき財産の洗い出し調査を始めとして色々な調査・報告を行う必要があります。

(4)家庭裁判所への成年後見人の選任申立ては、必要書類が多岐に渡りますので司法書士等の専門家に依頼する方が良いと思います選任申立てから選任審判まで通常1か月から4か月程度掛かります。

(5)成年後見人候補者を親族として申し立てることはできますが、家庭裁判所はこれに拘束されません。成年被後見人の財産が多い場合などは、法律専門家(弁護士や司法書士)が選任されることが多くなっていますこの場合、専門家への報酬が別途発生します。

 ※2019年3月追記 : 最高裁判所から「親族に適任者がいれば、親族後見人を原則として選任する。」との新しい通知が各家庭裁判所に発出されました。親族後見人がどの程度選任されるかは、今後の運用状況を確認する必要があります。

(6)親族やリーガルサポートに所属していない司法書士を候補者に立てた場合、後見監督人が別に選任されることが多くなっています。

※リーガルサポート‥成年後見業務を専門に所管・サポートしている司法書士からなる職能団体。リーガルサポートに所属している司法書士は、成年後見人としての職務教育を受けており、成年後見業務のプロフェショナルです。

 

遺産分割協議の実施と相続登記

(1)選任された成年後見人が成年被後見人の代理人として、相続人とともに遺産分割協議に参加します。

(2)協議内容について、家庭裁判所の許可はいりませんが、成年後見人には、職務上の義務として、成年被後見人の資産を保全する必要がありますので、成年被後見人に不利益な内容では協議に同意できないこととなります。

(3)協議された内容に従って、相続登記の手続きを行います。

ご注意事項

(1)成年後見人は、成年被後見人がお亡くなりになるまで辞任することは、原則としてできません。従って、遺産分割協議の為だけのスポット的な選任運用はできません

(2)成年後見人は、被後見人の為に、その財産を管理し続ける必要があります。また、専門家が成年後見人となった場合は、毎月報酬が発生します。

(3)この点に留意して成年後見人の活用を考えて頂く必要があります。

 

 

 

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