◆遺産承継業務とは

「遺産承継業務」として、現在、明確な定義が存在するわけではありません。身近な方が亡くなられた場合、色々とその後に行わなければならない届出や手続がたくさんある中で、大手信託銀行や法律事務所、税理士事務所などが、残された相続人の事務負担軽減の為に、それぞれの得意分野を中心として、相続手続の全部または一部を肩代わりして実施するサービス業務ということができると思います。

司法書士も相続登記を中心とした業務で、長年遺産の承継作業には、中心的な役割を果たして来ました。今回そのノウハウを生かしつつ、もう少し幅広く、遺産の承継業務を行っていこうと色々なサービスを開始しているところです。

幸い、司法書士は、遺産の承継業務を担う専門家として、弁護士と並んで法的に認められた専門家です。司法書士法第29条の委任を受けた司法書士法施行規則31条1項1号には、司法書士は、「当事者その他の関係人の依頼‥‥により、管財人、管理人、その他これらに類する地位に就き、‥‥他人の財産の管理若しくは処分を行う業務‥‥」を行うことができる専門家と定められています。

現在、大手金融機関や色々な事務所でこの遺産承継業務のサービスが開始されています。サービス内容や対応方法は、それぞれ異なっていますが、基本は錯綜する相続手続の負担を少しでも軽減して、相続人の方への円滑な遺産承継をサポートすることであると思います

◆身近な方が亡くなられた場合の必要な事務手続

身近な方が亡くなられた場合、まずは取り急ぎ、通夜・葬儀・告別式の準備と大忙しの状態になります。故人をなくした悲しみを癒す間もなく、次々とやるべきことや手続が発生します。

死亡診断書や死亡届、火葬許可申請等の手続きは、通常、葬儀社が手配してくれますので問題ないかと思いますが、その後に行わなければならない届出や手続は、それ以外に沢山存在します。

亡くなられた方が一家の中心人物の方や多額の財産を保有された方の場合、行わなければならない手続は、多数存在することになります

一般的には、本題である「資産承継」作業以外に次のような届出や手続が必要になります。

市役所(区役所)等の役所への届出
・死亡届、火葬許可申請、 必要な場合には、世帯主変更届、復氏届、姻族関係終了届 等

公共料金などの名義変更
※ 契約者が亡くなられた方の場合
・電気、ガス、水道、インターネット等の契約者変更など
・NTT固定電話の相続手続 (電話加入権)

携帯電話などの解約手続
・携帯電話やクレジットカードの解約手続

健康保険関係の届出
・国民健康保険または後期高齢者医療保険の資格喪失届
・埋葬費、埋葬料の申請
・高額医療費の支給申請
※ 高額医療費を支払った場合

年金関係の届出
・年金の支給停止届 (年金受給者の場合)
・未支給の年金の受給手続 (未支給の場合)
・遺族年金の受給手続き(資格がある場合)
・寡婦年金の受給手続 (資格がある場合)
・死亡一時金の受給手続 (資格がある場合)

税金関係の申告
・青色申告の承認申請 (該当の方)
・所得税の準確定申告 (該当の方)
・相続税の申告 (該当の方)

お墓関係の手続
・墓の登録名義人の変更 (変更が必要な方)
・墓の改葬 (変更が必要な方)
※墓の改葬とは、所属霊園の変更

本題の資産承継作業としては、所有する資産に応じて、次のようなものがあります。

預金の名義変更または解約
貯金の名義変更または解約
投資信託の解約
投資有価証券の名義変更(または解約)
株式の名義変更(またはその後の売却)
生命保険の保険金請求
車の名義変更
土地、建物の相続登記
ゴルフ会員権などの名義変更   など

その他、お金に関する問題としては、不動産などの名義が変更されるまで固定資産税などの税金の支払いや公共料金等の支払いを誰が行うのかという問題も発生します。

また、本題の資産承継を行う前提として、以下の調査が必要になります。

相続人の調査
戸籍、住民票等の調査
亡くなられた方の生きてから死亡されるまでの戸籍を追跡収集します。戸籍の移動が多い方は、収集に時間が掛かります。
遺言の有無調査
自筆証書遺言の場合は、家庭内の調査から始めます。公正証書遺言は、公証人役場で確認を行います。

財産の調査
・故人の財産は、意外と家族でも把握していないケースが殆んどであり、予想外に調査に時間がかかります。家に残された取引履歴や郵便物、通帳の取引履歴等から地道に調査することから始め、必要な場合、最寄りの金融機関に対して照会していく作業が発生します。また、完全に調査するのは無理な場合もあります。

負債の調査
・住宅ローンや教育ローン等から消費者ローンの有無まで確認をする必要があります。日本には、3つの大きな信用情報機関がありますので、そこに対し必要な場合、信用情報の開示請求を行います。

そして、確定した相続人と洗い出した遺産 (資産・負債) を前提として、相続人全員により、遺産分割協議を実施していくこととなります。

遺言書がある場合は、公正証書遺言の場合を除いて、家庭裁判所に対して遺言書の「検認手続」を行う必要があります。

最後に事業をされていた方や資産の多い方が亡くなった場合は、税金関係の申告作業 (所得税の準確定申告・相続税の確定申告・青色申告の承認申請等) が必要になります。

◆遺産承継業の専門家のサポートの必要性

このように遺産の承継業務は大変な作業が必要であり、必要な手続も色々ありますので、ご自身で全てを対応される場合、多くの時間と一部の専門的な知識の収集が必要となってきます。

勿論、最近は全てをご自身で実施される方も増えています。インターネットを有効に活用して情報を収集すれば、簡単な相続事例の場合は、ご自身で対応できる場合も多いかと思います。

但し、仕事の関係で十分な時間の取れない方やご自身で手続を行うことに少し不安のある方などは、「遺産承継業務」の全部または一部をそれぞれの専門家に依頼して、負担の軽減を図ることも有効な相続対策であると思います。特に、難易度のある相続事例の場合は、是非、専門家のサポートを受けて頂きたいと思います。

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※ご相談は、名古屋市瑞穂区の村瀨司法書士事務所にお任せください。

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