1.休眠担保権とは

休眠担保権」とか「休眠抵当権」とは、古い時代に設定され、現在も抹消されずに登記簿上に残っている抵当権等のことです。先代や先々代の時代、多くは明治時代や大正時代、或いは昭和初期に設定された抵当権などの担保権です。

多くの場合、担保権者の所在が知れないことが多く、また設定されている債権金額が数百円程度のものが多いことも特徴となっています。先代や先々代が債権を弁済したのかどうかも不明のものが多く、さらに多くの場合、関係する借用書等の契約資料が全く残っていない状況となっています。

2.休眠担保権の例

抵当権の内容としては、例えば、次のような内容です。

<例1>
借入年月日 : 大正3年6月28日
債権額 : 金90円
利 息 : 100円に付日歩2銭5厘
損害額 : 定めなし
弁済期 : 大正5年10月20日

<例2>
借入年月日 : 明治35年12月28日
債権額 : 玄米四石八升 価格金65円
利 息 : 玄米八升
損害額 : 玄米壱石
弁済期 : 明治42年10月20日迄

例1は、僅か90円の債権金額です。当時とは物価が異なっていますが、法律的に見れは関係がありませんので、現在から見て債権額は、やはり90円となります。例2は、元金、利息が玄米となっており、どう弁済してよいのか分からない内容となっています。

3.休眠担保権に対する対応方法

不動産の権利の登記簿に金額が些少といえどもこのような担保権が残っていますと売買や新たな資金借入時の担保権の設定に支障が生じることがあります。該当不動産を売却して資金を得ようとしても、買主側から見れば、当然担保権のない真っ新な物件として購入したいと思いますので、担保がついていますと容易に売ることが出来なくなる恐れがあります。

従って、これら休眠担保権は、適当な時期に抹消しておくことが必要です。よくあるのが、相続で父親の不動産を取得した時、相続時の登記簿を見てこの担保権がついていることが発見され、どうしようかと悩まれるケースがあります。

居住用の不動産として使用していた場合、父親の代でも存在は知っていたかもしれませんが、特に不便は感じない為、そのままとなっている場合が多いかと思います。

いずれにしても、休眠担保権は発見された場合は、なるべく早く抹消の手続をお考えになる方が良いと思います。というのも休眠担保権は普通の抵当権の様に簡単に抹消出来るものではありません。ケースによっては、抹消自体が困難な場合もあります。また、抹消可能な場合でも手続に時間が掛かることが多い為、急な売買等の事情が発生しても間に合わないことが多いと思います。

抹消には、色々な手段がありますが、裁判によらなければ抹消出来ないケースも時々ありますので、半年や1年程度は普通にかかってしまいます。従って、早めに抹消手続の検討をされることをお勧めします。

 

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