第一関門  資金調達
起業で最大の悩みは、資金調達です。大半の方は、開業に必要な潤沢な資金はありません。私が、開業を推奨する定年前後のシニア層は、若い人より資金はあるかもしれません。退職金が出でいるかもしれません。しかし、一番の強みは、年金などの継続的な生活資金が出ることです。出るけど額が少ないと言われる方も多いと思いますが、たとえ僅かでも生活の支えがあるのとないのとでは、事業への取り組み方が全然違います。経営に集中できるか否かの余裕度に違いが出ます。

では、開業資金はどのように調達するのでしょうか。調達先として考えられるのは、次の先が考えられます。
預貯金の取り崩し
親族からの借り入れ
友人からの借り入れ
ここで調達できなければ、金融機関を訪ねることになります。人によっては、国や地方公共団体を訪ねる方もいるでしょう。

個人がビジネスとして起業する場合、資金調達は、金融機関からの調達を考えることが必要になります金の貸し借りは、ビジネスとして合理的に行うものであり、親類縁者や友人からの借り入れでは、将来、互いの人間関係に悪い影響が出る恐れがあります。

資金調達先
では、金融機関からの借り入れといってどこから借り入れるのでしょうか。
大手銀行は、融資の判断をする為に過去3期分の決算書を要求します。新規創業の会社には、決算書はありませんから、当然借り入れの対象になりません。通常は、政府系金融機関からの借り入れとなります。また併せて、地方自治体の融資や補助金なども活用することになります。政府系金融機関は、書面さえ整えれば、銀行と比べれば、比較的容易に借り入れが可能です。

金融機関に借り入れに行く前に準備すること
まず、いくら資金が必要になるのか計算することです。自分自身だけが納得するような自己満足型の計算ではだめです。客観的計算根拠を示して、第三者にもわかるものが必要です。普通は以下の項目に分けて積算します。
開業準備の為の資金
事業運転の為の資金
資金ショート時の対応バッファ資金
生活資金

①は、金額的に大きいので、インフラ、設備、仕入れなど分類して整理します。
②は、仕入れと販売の時間差から資金の回収にずれが生じますので、その間の資金手当てです。仕入れと販売の掛けの期間を明示して必要金額を計算します。
③は、創業当初は、経営が安定しませんので一定の余裕資金がないと危機管理が難しくなります。
➃は、6ヶ月から1年程度の生活費は、確保しておくことが必要です。

具体的資金調達先
既に銀行や信用金庫等と取引があり、融資が受けられる可能性があれば、是非 、そちらの融資 (通常「プロパー融資」といわれる )を進めて下さい。そのような先がなく、担保も保証人も準備できない方は、次の融資制度を活用することになります。
日本政策金融公庫からの借り入れ
地方自治体の制度融資を活用した銀行借り入れ

①は、政府系の金融機関であり、初めての利用者に対しても、書面が整っていて妥当なものであれば、創業資金を融資してくれます。
②は、信用保証協会保証付融資(通常、「まる保融資」といわれる)です。銀行が 融資をするにあたって地方公共団体の分身的存在である信用保証協会が、皆さんの融資について保証人となってくれるものです。銀行は、公的機関の保証人がついているので安心して創業時融資をしてくれます。

通常は、②を先に申し込み、その不足分を①で補うのが良いでしょう。金利が②が低いからです。但し、②は借り入れ金額上限の枠が厳しいことや審査に時間がかかる点が難点となります。(自治体=>保証協会=>銀行の3機関を経由する為)

融資申し込みに必要なもの
日本政策金融公庫の場合は、以下の資料が重要です。(申し込み時に必要な資料は公庫のホームページなどでご確認ください。)
創業計画書
② 起業概要書
他にも色々な資料が必要ですが、大半は本人確認用のものや資産状況(他の負債の有無)の確認の為の資料です。ポイントは①となります。

フォーマットは、制定されていますが、ただ単に書けば良いと言うものではなく必要資金の妥当性や事業計画のわかりやすさ、返済計画の納得性などポイントを 明確にして書く必要があります。また、売り上げ見通しの妥当性を証明する資料として販売先やカタログ、受注先一覧など色々な資料を添付して、その妥当性をアピールする必要があります。

地方自治体の制度融資の場合は、各自治体ごとに違いがありますので一概に言えませんが、基本は、創業計画書の書き方です。但し、日本政策金融公庫は、該当の店舗に行けばよいのですが、制度融資は面倒となります。

簡単にいえば、以下のとおりとなります。少し時間がかかります。
自治体の窓口で相談
② 自治体に融資あっせんを申し込む
③ 自治体に紹介状を発行してもらう
紹介状を持参して金融機関で融資の申し込みをする
⑤ 金融機関で面談を受ける
信用保証協協会へ信用保証の委託申し込みをする
信用保証協会での審査(実質的にここが審査になります)
⑧ 信用保証委託契約締結
銀行の融資実行

公的融資の問題点
上記公的融資は、資金のない方にとっては、救世主的な存在ですが、デメリットもあります。公的な機関ですので、万一のとき融通が利きません。何の問題もなく返済できれば、特に問題はありませんが、万が一返済に行き詰まったとき、銀行融資であれば、民間企業ですので、利益考量の判断が働いて、債務整理の交渉の余地があります。倒産して、資産価値がゼロになるよりは、債務を3割、4割カットしてでも再生させて少しでも回収率を上げる方が経済的効率性の観点から優れています。民間企業は、そのような判断をしてくれます。しかし、公的機関は、一切応じません。例え、100年かけてでも計算上の分割払いを要求してくると思います。この点は頭の片隅に置いておいてください。

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