⑥ 遺言代用信託 (信託を遺言書の代用として活用する信託)

◆家族信託の内容について、事例ケース毎のご説明を致します。 ※家族信託の一般的な説明や手順、費用などについては、こちらをご覧下さい。

<困っている課題・問題>

・高齢者の山田太郎さん(85才)は、妻の純子さん(82才)と暮らしています。
・妻の純子さんは、最近、認知症の症状が出てきています。

・山田さんの保有資産は、自宅と金融資産があります。

・山田さんには、長男の健一さん(60才)、長女の加奈子さん(58才)がいます。
・健一さんと加奈子さんは、それぞれ結婚して子供がいます。また、それぞれ自宅を持っています。

・山田さんは、将来自分が認知症になった場合、自宅や金融資産の管理・運用や妻の介護について不安を感じています。

・山田さんは、自分たち夫婦が亡くなった後の資産は、長男と長女に均等に相続させたいと思っています。
・住んでいる自宅は、長男、長女にとって必要ないので売却して良いと考えています。
・但し、山田さんと妻の純子さんが亡くなるまでは住み続けられるようにしてほしいと思ってます。

<現在の状況>

<家族信託を活用した場合>

◆家族信託で実現したいこと

・自宅や金融資産の管理を長男の健一さんに任せる。
・長男の健一さんは、父の自宅を管理し父親夫婦が快適に生活できるようにする。
・長男の健一さんは、金融資産を運用し、父親に対して生活費や医療費など必要費を支出する。
・長男の健一さんは、父死亡後、父の自宅や金融資産を引続き管理し、母の純子さんが快適に生活できるように自宅に引続き居住させ、また生活費や介護費など必要な費用を支出する。
・長男の健一さんは、母の純子さんが亡くなった時点で父母の住んでいた自宅を売却する。
・長男の健一さんは、居宅の売却代金と残った金融資産の合計額を自分と妹の加奈子さんで均等に分配して承継する。

◆家族信託での対応方法

・山田さんを「委託者」兼「第一次受益者」、妻の純子さんを「第二次受益者」、長男の健一さんを「受託者」とし、長男の健一さんと長女の加奈子さんを「第三次受益者(残余財産受益者)」とする民事信託契約 (家族信託契約) を締結する

・「信託財産」を自宅と金融資産とする。

・山田さんから長男の健一さんへ「信託する内容」を次のとおり定める。

①長男の健一さんは、自宅と金融資産の管理・運用を行う。
②長男の健一さんは、山田さん夫婦が自宅で快適に暮らせるようにする。
③長男の健一さんは、金融資産を運用し、山田さんの生活費、医療費、介護費に支出する。
④長男の健一さんは、山田さんが亡くなった後も自宅と金融資産の管理・運用を継続する。
⑤長男の健一さんは、母の純子さんが自宅で快適に暮らせるようにする。また、必要な生活費、介護費、医療費を金融資産の中から支出する。
⑥長男の健一さんは、母の純子さんが亡くなった以降も自宅や金融資産の管理・運用を継続する。
⑦長男の健一さんは、父母の居住していた自宅を売却する。
⑧父母の居住していた自宅が売却された時を信託終了日とする。
⑨信託終了時に残存する残余財産(金融資産および自宅の売却益)の帰属は、長男の健一さんと長女の加奈子さんで均等に承継する。
⑩長男健一さんの信託報酬は無償とする。

<家族信託後のイメージ>

<山田さんと純子さんが亡くなった後のイメージ>

⑦ 夫婦で行う信託(夫婦が子供に財産管理を託し相続発生時は子に財産承継する信託)

<困っている課題・問題>

・高齢者の山田太郎さん(85才)は、妻の純子さん(82才)と暮らしています。
・山田さんは、自宅と金融資産を保有しています。妻の純子さんは、父から相続した賃貸アパートと金融資産を保有しています。

・夫婦とも現在は元気で暮らしていますが、体力面の衰えや認知症に対する不安から、今後の自宅や賃貸アパート、金融資産の管理運用に懸念をいだいています。

・山田さん夫婦には、長男健一さん(60才)、長女加奈子さん(58才)がいます。

・夫婦は、現在の資産で今後の余生を安心して暮らせるようにしたいと考えています。

・残った資産の相続については、自宅は長男に相続させ、賃貸アパートは長女に相続させたいと考えています。また、残った金融資産は長男と長女に自宅や賃貸アパートの評価額を考慮して概ね均等になるように相続させたいと考えています。

<現在の状況>

<家族信託を活用した場合>

◆家族信託で実現したいこと

・山田さん夫婦は、それぞれ自宅や賃貸アパート、金融資産の管理を長男の健一さんに任せる。
・長男の健一さんは、父の自宅を管理し両親が快適に生活できるようにする。
・長男の健一さんは、母の賃貸アパートの管理運営を行い、得られた収益を母の生活費や医療費など必要費に支出し快適に生活できるようにする。
・長男の健一さんは、父と母の金融資産を運用し、それぞれに対して生活費や医療費など必要費を支出し快適に生活できるようにする。

(父が先に亡くなった場合の対応方法)
・父の自宅は、母に帰属させる。
・残った父の金融資産は、長男健一さんと長女加奈子さんにそれぞれの遺留分相当額を帰属させ、残り全てを母純子さんに帰属させる。
・母に帰属した自宅と金融資産の管理は、長男健一さんに任せる。
・その後、母が亡くなった場合は、自宅は長男健一さんに帰属させ、賃貸アパートは長女加奈子さんに帰属させる。残された金融資産は、長男健一さんが3分の2、長女加奈子さんが3分の1を取得する。

(母が先に亡くなった場合の取扱い)
・母の賃貸マンションは、父に帰属させる。
・残った母の金融資産は、長男健一さんと長女加奈子さんにそれぞれの遺留分相当額を帰属させ、残り全てを父山田さんに帰属させる。
・父に帰属した賃貸アパートと金融資産の管理は、長男健一さんに任せる。
・その後、父が亡くなった場合は、自宅は長男健一さんに帰属させ、賃貸アパートは長女加奈子さんに帰属させる。残された金融資産は、長男健一さんが3分の2、長女加奈子さんが3分の1を取得する。

◆家族信託での対応方法

・このケースでは、2口の家族信託契約の設定となります。

(1口目の信託契約)

・山田さんを「委託者」兼「受益者」、長男の健一さんを「受託者」とする民事信託契約 (家族信託契約)を締結する。

・「信託財産」を自宅と金融資産とする。

・山田さんから長男の健一さんへ「信託する内容」を次のとおり定める。

①長男の健一さんは、自宅と金融資産の管理・運用を行う。
②長男の健一さんは、山田さん夫婦が自宅で快適に暮らせるようにする。
③長男の健一さんは、金融資産を運用し、山田さんの生活費、医療費、介護費に支出する。
④山田さんが亡くなった時を信託終了日とする。
⑤信託終了時に残存する残余財産の帰属は、自宅は、妻の純子さんに帰属させ、金融資産は長男の健一さんと長女の加奈子さんに遺留分相当額を帰属させる。残った金融資産は全て妻の純子さんに帰属させる。
⑥信託終了前に妻が亡くなった場合は、妻からの帰属財産である賃貸アパートと金融資産は、信託財産に追加として拠出する。
⑦妻が亡くなった後自分が亡くなった場合の残余財産の帰属は、自宅は長男の健一さんに帰属させ、賃貸アパートは長女の加奈子さんに帰属させる。金融資産は、長男の健一さんに3分の2、長女の加奈子さんに3分の1を取得させる。
⑧長男健一さんの信託報酬は無償とする。

(2口目の信託契約)

・妻の純子さんを「委託者」兼「受益者」、長男の健一さんを「受託者」とする民事信託契約 (家族信託契約) を締結する

・「信託財産」を賃貸アパートと金融資産とする。

・妻の純子さんから長男の健一さんへ「信託する内容」を次のとおり定める。

①長男の健一さんは、賃貸アパートと金融資産の管理・運用を行う。
②長男の健一さんは、賃貸アパートの運営管理を行い得られた収益を純子さんの生活費、医療費、介護費に支出する。
③長男の健一さんは、金融資産を運用し、純子さんの生活費、医療費、介護費に支出する。
④純子さんが亡くなった時を信託終了日とする。
⑤信託終了時に残存する残余財産の帰属は、賃貸アパートは、山田さんに帰属させ、金融資産は長男の健一さんと長女の加奈子さんに遺留分相当額を帰属させる。残った金融資産は全て山田さんに帰属させる。
⑥信託終了前に山田さんが亡くなった場合は、山田さんからの帰属財産である自宅と金融資産は、信託財産に追加として拠出する。
⑦山田が亡くなった後自分が亡くなった場合の残余財産の帰属は、自宅は長男の健一さんに帰属させ、賃貸アパートは長女の加奈子さんに帰属させる。金融資産は、長男の健一さんに3分の2、長女の加奈子さんに3分の1を取得させる。
⑧長男健一さんの信託報酬は無償とする。

<家族信託後のイメージ>

<山田さん死亡し、妻純子さんが残された場合のイメージ>

<その後、妻純子さんも亡くなった時のイメージ>

⑧ ペット信託 (飼い主死亡後のペットの世話を図る信託) 

<困っている課題・問題>

・高齢者の山田さんは、可愛がっている愛犬がいます。

・山田さんは、自分が病気で入院となったり介護施設に入った場合の愛犬の世話について心配しています。

・山田さんには、犬が苦手な長男の健一さんと犬好きの長女の加奈子さんがいます。

・山田さんには金融資産があるので、このお金を使って自分が世話ができなくなった場合の犬の世話を長女に頼みたいと考えています。

・但し、長女に愛犬の世話代をまとめて渡しておく事にも不安を感じています。確実に愛犬の世話が出来るようにしたいと願っています。

<現在の状況>

<家族信託を活用した場合>

◆家族信託で実現したいこと

・愛犬の世話にかかる費用の管理を長男の健一さんに任せたい。
・愛犬の世話について、山田さんが入院や施設に入所した場合は、長女に面倒を見てもらいたい。
・山田さんが亡くなった時は、残った費用は長女の加奈子さんに相続させたい。

◆家族信託での対応方法

・山田さんを「委託者」・「受益者」、長男の健一さんを「受託者」とする民事信託契約 (家族信託契約) を締結する。

・長女の加奈子さんを「受益者代理人」とし、山田さんが存命中に愛犬の世話ができなくなった場合、山田さんの代理人として犬の世話をする。

・長女の加奈子さんを「2次受益者(最終財産帰属者)」とする。

・「信託財産」を金融資産のうち愛犬の世話に必要な費用とする。

・山田さんから長男の健一さんへ「信託する内容」を次のとおり定める。

①長男の健一さんは、金融資産の管理を行う。
②長男の健一さんは、愛犬の世話のため必要な費用を金融資産の中から山田さんに交付する。
③長男の健一さんは、山田さんが病気で入院したり介護施設に入所し愛犬の世話が難しくなった時は、受益者代理人の加奈子さんに愛犬の世話代を金融資産の中から交付する。
④受益者代理人の加奈子さんは愛犬の世話をする。
⑤信託終了日を愛犬の死亡日とする。
⑥信託終了時に残った残余財産は、長女の加奈子さんに帰属する。
⑦長男健一さんの信託報酬は無償とする。

<家族信託後のイメージ>

<山田さんが介護施設に入所した場合のイメージ>

<山田さんが他界した場合のイメージ>

<愛犬が亡くなった場合のイメージ>


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