頼れる家族がいない人の亡くなった後のことは「死後事務委任」で解決できます

身近に頼れる家族や親族がいない一人暮らしの高齢者は、自分が亡くなった後の色々な手続きについて不安に思うことが多いと思います。「自分が亡くなった後のことだから別にどうでもいいや」と考える方もいると思いますが、多くの方は「人に迷惑をかけたくない」と考えています。できれば、生前に必要な対策を行って思い残すことのないようにしたいと考えています。


亡くなった後の事務的な手続きは様々なものがあります。代表的なものとしては、①家族・友人への連絡、②葬儀・埋葬手続き、③役所・関係機関への届出、④医療費・介護施設利用料などの未払費用の清算、⑤遺品整理や住まいの処分、⑥各種サービス契約 (電気・ガス・水道・携帯・ネット・新聞・クレジット等)の解約などがあります。これらを「死後事務」といいます。


葬儀・埋葬については、個人の宗教・宗派や宗教観の違いから色々なバリエーションが発生します。散骨・樹木葬などの自然葬を希望する場合もあります。将来の法要 (三回忌、十七回忌、三十三回忌等)の希望もあると思います。


最近は、ネットの利用が増えていますので、SNSアカウントやパソコン内のデータの削除なども希望としてあると思います。また、残されたペットの扱いについても心配の種になると思います。


不安を感じている方は、独居の高齢者だけではないと思います。家族や親族はいるが、色々な事情があって、面倒な死後事務を依頼できない場合や依頼しずらい場合もあると思います。また、依頼される親族が高齢の場合、事務手続の依頼に不安を感じる場合もあると思います。

内縁関係の夫婦や同性のカップルの場合も、お互いが法律上の夫婦ではないため死後事務を相続人として行うことができないため問題となります。

このような悩みを解決する1つの手段として「死後事務委任」契約があります。お一人様の増加に伴って世の中で徐々に認知されるようになってきました。

「死後事務委任契約」とは、本人が第三者に対して、亡くなった後の諸手続き、事務などについて代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。事務手続に必要な費用負担や相手方へのお礼も定めることになります。契約ですので本人が認知症になった場合はすることができません。本人が元気なうちに行う必要があります。

契約の相手方は、できれば信頼のおける親族や親しい友人が理想ですが、一人暮らしの高齢者の場合は難しいと思います。内縁の夫婦や同性カップルの場合は相手方になると思います。そのような方が見つかれば、その方にお願いすることになります。

適任者が見つからなくても、最近は民間の事業者で死後事務委任を専門に扱ってる業者も増えています。ネットで検索すれば近くの業者が見つかると思います。

但し、死後事務委任を行っている業者に対する取締法令や監督官庁がないことから、業者の中には高額な前受金などを要求する不誠実な業者もいます。事業者の選定には十分な注意が必要になります。弁護士や司法書士などの法律専門職が業務の1つとして対応している事務所もありますので選択肢の1つになります。

ところで、「死後事務委任契約」ではなくて「遺言」でも同じような効果を期待できるのではないかと考える方もいると思います。しかし、遺言では死後事務を委任することができません。遺言できる事柄は、法律で限定的に定められています。より分かりやすくいえば、遺言書に書いて遺言として法律的に効力のある事柄は限定されているということです。


遺言書には「財産の処分方法」を書きますが、それ以外にも「子の認知」「祭祀承継者の指定」など法律で効力の認められた事柄について記載することができます。法律で定められた事柄以外について遺言書に書くことは自由ですが、書いても法的な効力はありません。

通常、法律で効力が認められた項目は遺言書の本文に記載し、それ以外の事柄は本文末尾に「付言事項」として書きます。付言事項には法的な効力はありません。死後事務委任に関する事項は付言事項に該当しますので書いても法的な効力はありません。

また、遺言は本人の一方的な意思表明ですので相手方の同意を取っていません。従って、相手方を拘束する効力はありません。一方の死後事務委任契約は、相手方との「契約」ですので、相手方が契約に同意した以上、内容を実現する法的な義務が発生します。これによって死後事務を安心して任せることができます。

通常、「死後事務委任契約」は公証役場で公正証書として作成します。委任事項を実行する段階で契約の一方当事者である本人は既に亡くなっていますので、委任事項に疑義が生じては問題となります。そこで死後事務委任契約は公正証書で作成し内容の事前確認を厳格化して問題が発生しないようにします。


(まとめ)

「死後事務委任契約」は、高齢化の進展とともに益々社会的なニーズが広がっていくと思います。自分の亡くなった後のことが心配な方は、とりあえず、弁護士や司法書士などの法律の専門家に一度相談されることをお勧めします。

自分が亡くなった後のことで他人に迷惑をかけたくないという思いを実現できるように色々な検討をしてもらいたいと思います。

 

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