「相続登記の義務化」が本格的に動き始めたようです

相続登記の義務化」を定める民法・不動産登記法の改正の動きが本格化してきました。法制審議会(法相の諮問機関)が年内にまとめる「所有者不明土地対策」の中で、被相続人が亡くなった際に相続登記の申請を義務付ける規定の創設を検討しています。一定期間のうちに登記しなければ罰則を設けることをも検討されています。法制審は年内に案をとりまとめ、意見公募(パブリックコメント)を経て答申を出す予定となっています。

所有者不明土地」問題は、東日本大震災の復興にあたり、多くの所有者不明の土地があることにより、復興事業が円滑に進まないことで社会的に注目されました。震災復興以外にも「空き家」問題も社会的に大きな問題となっていますが、その原因も所有者の不明が原因となっている場合が多くなっています。

このような状況を踏まえ、政府は「所有者不明土地」問題を政府の重要課題と位置付け、解決に向けて、検討を重ねてきましたが、今回原案がまとまったということです。

所有者不明土地の発生を予防するための仕組みとして、2つの方向から検討が進められてきました。1つは、不動産登記情報の更新を図る方策」です。不動産登記簿の登録内容を最新の状態にするという意味です。不動産登記は、権利者が登記所に申請しなければ登録内容は最新化(更新)されません。父親が亡くなっても相続登記をしなければ、不動産の名義は父親のままです。この点を改めるため、現在は任意となっている相続登記の申請を「義務化」しようとするものです。

「義務化」の実効性を担保するために、「罰則」の導入も検討される模様です。登記名義人が死亡した場合、死亡情報を登記所が他の公的機関より入手し、不動産登記情報の更新を図る方策もあわせて検討される見込みです。

2つ目の方向は、所有者不明土地の発生を抑制する方策」です。何故、相続登記をしないのかという問題を考えていくと「土地を所有したくない」という問題に突き当たります。地方の親の実家を相続しても管理コストだけかかってしまう。田舎の山林を相続しても管理の仕方が分からない。売却したくても買い手が見つからない。等の問題があります。

この問題に対応するため「土地所有権の放棄」を認める制度の創設を検討しています。現在の民法には規定がなく確立した判例もないことから、土地所有権の放棄が認められるかどうか不明となっています。今回、法律でこれを認めることを検討するものです。但し、単に管理したくないから放棄するのでは、日本国中の土地が荒れ放題になる恐れもあることから、一定のモラルハザートの防止策も検討されると思います。

また、所有者不明土地を抑制する方策として、「遺産分割の期間制限」を設けることも検討されています。現行法上、遺産分割に期間の制限はないため、長期間遺産分割がされないまま放置され、数代に渡ってそのままにされると、誰の所有地か不明となってしまいます。これを防止するため遺産分割に期間制限を設けることが検討されています。相続税の申告は、被相続人の死亡後10か月以内と決まっていますが、期間の長さは別として、このような感じになるのでしょうか。

これ以外にも、「所有者不明土地を円滑・適正に利用する為の仕組み」として、改善策が検討されています。例えば、共有関係にある所有者不明土地の利用方策、所有者不明土地を管理する不在者財産管理人の職務範囲の見直し、隣地が所有者不明土地の場合の該当土地の利用方策、等 検討されています。

意見公募を経てまとめられる最終案は、答申内容を確認しなければ分かりませんが、「相続登記の義務化」の方向は確実に進むものと思われます。

相続登記は、手続きが複雑で面倒な点も相続登記が進まない原因と考えられていますので、国民負担軽減の観点から、相続登記自体の簡素化も併せて検討されるものと思われます。マイナンバーを活用して、登記記録と戸籍等の情報が連結できれば、合理化・簡素化は進むと思いますが、技術的な問題や運営面の課題があると思いますので、段階的に改善されていくものと思います。

政府の目算では、2020年に必要な制度改正の実現を目指していますので、今後、話は急速に進むものと思います。いずれにしても、相続登記は早めに行うことが肝心の時代となります

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