熟年婚活が盛んですが、相続トラブル等の対策も必要です

50代以上の方が新たな伴侶を探す「熟年婚活」が盛んにおこなわれています。平均寿命が長くなり、人生100年時代を迎えて、配偶者と死別された多くの方が、残りの長い人生を1人で生きていくのは寂しく不安だと考えるようになっています。熟年婚活に対する世間の認知度も向上し、抵抗感も薄れていることから、熟年婚活が今盛況になっていると思います。この傾向は、一過性のものではなく今後も益々盛んになっていくものと思われます。

最近は高まる需要を取り込もうと「熟年婚活ビジネス」も盛況に行われています。ネットで「熟年婚活」と検索すれば、数多くの業者が多種多様なお見合いイベントを提供していることが分かります。お見合い情報の提供や婚活バスツアー、婚活パーティー、中高年・シニアの婚活・結婚相談会など色々な企画が目白押しとなっています。

実際に厚生労働省の統計資料によれば、65歳以上の結婚者数が最近急増していることが分かります。1990年に男性で3,148人だった年間結婚者数が、2015年には9,329人と3倍に増加しています。女性では1,349人だったものが5,190人に4倍になっています。

若者の婚姻数が減少の一途を辿っており、1972年のピーク時には、109万9,984組あった婚姻件数が、2017年には過去最低の60万6,866組に減少し、婚姻率も4.9(人口千人当たりの婚姻件数。ピーク時は10.0以上)となっていることからすると熟年婚姻の増加が際立っています

熟年婚活の増加に伴って、実際にカップルとなられた方が結婚するかどうかは別問題です。それぞれのお子さんの問題や相続財産の関係で簡単には「結婚」に踏み切れない場合が多いのです。この結果、「事実婚」を選択されるカップルも多いと思います。

熟年婚活でよくみられる問題は2つあります1つは、結婚を選択した場合の遺産相続をどうするかという問題です。正式に結婚すれば、配偶者には法定相続分の2分の1が発生しますので、遺産を持っていかれる子供達が反対する場合があります。一方の配偶者の財産が少ない場合は、結婚への反対が強くなる傾向があります。

2つ目の問題は、結婚を選択しない場合、一方のパートナーが病気や認知症になった時、他方のパートナーは法的には夫婦でない為、対応できることに制限がかかってしまうことです。病気で手術や治療が必要となった時、本人に意識がない場合、親族に同意が求められますが、第三者のパートナーには難しい可能性があります。

これ以外にも解決しなければならない課題は色々あると思います。特に人間関係の問題は簡単には解決しないかもしれません。しかし、法律的な事前の対応策で当人や関係親族の不安を一定程度解消できる方法はあります

まず、相続財産のトラブルに関しては、「遺言書」をうまく活用してほしいと思います。子供達に不安を与えないように遺産承継方法について遺言書を作成しておけば、子供たちの反対も少なくなると思います。遺言の内容としては、相手方パートナーの居住環境や生活費を確保した上で、残余財産は子供たちに与えるとするものが多くなると思います。相続法の改正によって令和2年4月からは、配偶者居住権という制度が新設されますので、これをうまく活用して、実家の居住権は配偶者に与えつつ、所有権は子供たちが相続するようなことも可能となります。

また、賃貸不動産を所有するなど相続財産が多い場合は、財産の状況に応じて、財産の管理運用方法、賃料収入などの分配方法、最終的な財産の相続方法、などについて予め親族間で契約して決めておくことのできる「家族信託の活用もあります。

事実婚で行く場合は、相手方パートナーの病気や認知症で判断能力が衰えた場合の対応策として「任意後見契約を締結しておく方法があります。一方の判断能力が衰えた場合、相手方は、後見人となって相手方の生活を支えることが出来ます。夫婦でそれぞれを任意後見人に指定しておけば、どちらが先に判断能力が衰えても安心です。

熟年婚活が盛んになり、長い第2の人生を新たなパートナーと過ごしていく方がこれから増えて来ると思います。熟年婚活を考えているご本人もその家族の方も想定されるトラブルを事前によく見極めて頂いて、賢い策でご対応願いたいと思います。

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