東京五輪の為のサマータイム導入は疑問に思います

政府は、2019年と2020年の2年間限定で、サマータイムを導入するための検討を本格的に始めたと新聞各紙が報じました。秋の臨時国会での、議員立法を目指すようです。一部の報道では、期間限定ではなく恒久化も検討課題のような内容のものもあります。

6月から8月の数か月間だけ2時間繰り上げる方向で、2019年に試験導入し、2020年に本格導入する案が有力だといいます。今年の夏の猛暑を受け、選手や競技への暑さによる負担を軽減するために実施する目的のようです。マラソンなど一部の競技時間の開始時刻は既に繰り上げスタートを発表しています。更なる早朝時間帯を目指そうとするものだと思います。

しかし、東京五輪の為だけにサマータイムという全国民を巻き込む制度変更が本当に必要なのか疑問に思います。単純に考えれば、暑さ対策だけの為ならば、マラソンなどの競技開始時刻をさらに1~2時間前倒しにすれば済むことのような気がします。

サマータイムの導入は、人々の健康面に多大の影響を与えると思います。時差に順応するには、通常は3週間程度は必要と言われています。その間は、眠気や倦怠感が生じることになり、仕事の効率低下やうっかりミスの増加、さらにそれらによる重大事故の発生が懸念されます。

特に、高齢者は時差に順応することが難しい方や順応時間が長くかかる方もいると思います。高齢者の中には不眠で悩まれている方も多いと思いますが、さらに症状を悪化させる懸念もあります。不眠状態が続けば、血圧の上昇や不整脈など健康面への影響が憂慮されます。

世の中の時間を変えることは、時計の針を変更するだけでは済まないのが現代社会です。世の中の隅々までコンピュータ制御されていますので、制御の基準となる時刻の変更は、ソフトウェアの大規模修正が発生し、プログラムの修正と大規模な確認の為のテストが必要になります。

来年は、元号が変更になりますので改元の為のシステム変更が今後急ピッチで必要になってまいります。前回の平成の改元の時もシステムエンジニアは、四苦八苦で対応しました。平成の改元以降、このような大きなシステム変更対応は、2000年問題で揺れたY2K対応があります。2000年になるとコンピュータが不正に稼働すると言われた問題への対応でした。当時もシステムエンジニアは、Y2K対応に追われて大忙しの状態でした。

今回もし改元とサマータイムを同時期に対応するとすれば、IT業界は本来予定していた開発案件のうち一定のものを後回しにして対応せざるを得なくなると思います。サマータイムの開発の難しいところは、改元のように変更したらおしまいではなく、また元の時刻に戻す処理が必要となる為、二重の手間 (開発システムのテストが行きと戻りで2度必要)が発生します。

折しも消費税の税率アップが来年には控えていますが、今回の税率アップは、非常に複雑な面があります。食料品などの税率は8%が維持される為、システム対応内容は想定以上に難しいものになると思います。これも負荷としてエンジニアにのしかかってきます。

今後、この問題の議論が本格化すると思いますが、導入の本来の目的を明確にしてもらいたいと思います。その上でサマータイム導入が本当に必要なのかを真剣に議論してもらいたいと思います。

 

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