藤井聡太六段、驚異のスピード出世

藤井聡太五段が、朝日杯で羽生竜王、棋聖に勝利し、続けて広瀬八段にも勝って優勝しました。即日、規定により六段に昇段しました。15歳6か月のスピード出世は、加藤一二三 九段の15歳10ケ月を抜いて歴代一位となりました。

対戦前の下馬評では、さすがに羽生永世七冠の勝ちであろうと予想されていました。以前より、藤井六段を高く評していた加藤九段も今回については、羽生永世七冠の勝ちを予想していました。理由は、公式戦であるので藤井六段の棋譜を事前に入念に研究してくる事や早指し対決である為、早指しの得意な羽生永世七冠の有利さを挙げていました。

過去の朝日杯では、羽生永世七冠が全体の半数の優勝をしています。その意味で朝日杯は、得意な大会の筈でした。

試合は、今流行の「雁木囲い」(がんぎがこい)での戦いとなりました。従来、囲いと言えば「矢倉囲い」でしたが、「雁木囲い」がコンピュータ将棋ソフトで採用される事が多くなり、2017年から相矢倉の急速な退潮と期を合わせるようにプロ間でも見直されるようになった戦法です。

序盤の羽生永世七冠の僅かな桂馬の駒損を終盤まで引きづった形で試合は進行しました。中盤、終盤ともお互い大きなミスはなく、そのままの形成で最終盤まで行きました。藤井六段について、羽生永世七冠は、戦いの後のコメントで「藤井六段は、全く安定した試合運びであった。」と評価しています。

最終戦で戦った広瀬八段は、元王位のA級棋士です。今回の優勝までに、A級棋士の佐藤天彦名人も破っていますので、まさに向かうところ敵なしの状況に見えます。師匠の杉本昌隆七段も「藤井六段は戦う毎に進化している。相手の技量を全て吸収しながら成長している。」と述べています。まさに驚異の中学生です。

藤井六段の従来から言われていた特徴は、序盤や中盤は若干弱い点が見られるが、終盤から最終盤にかけての粘りと力の出し方は驚異的であるというものでした。しかし、これまでの対戦から多くの事を吸収したことにより、序盤や中盤も安定したさばきが出来る様になってきています。安定した駒さばきでミスをしない将棋となっています。

ちなみに、「雁木囲い」の命名の由来は、新潟県で雪よけのために家々の軒から庇(ひさし)を長く差し出して、その下を通路とする雁木造に似ている所に由来すると言われています。この戦法は、AI将棋の世界で今流行している戦法ですが、羽生永世七冠もやはりAI将棋も研究されているんだと思いました。

先日、五段の昇段を祝福してまだ半月しかたっていないのにまた六段に昇段されました。いよいよ名人になる日もそう遠くないかもしれません。

Follow me!