日銀、出口戦略開始か? マイナス金利の終焉近づくのか。

驚いたニュースが飛び込んできました。ロンドンで開催されている「世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)」に出席している黒田日銀総裁が、日銀が掲げる2%の物価上昇目標に関して「ついに(達成に)近づいている」と語ったというものです。また黒田総裁は、日本経済が今後も緩やかな拡大を続けると予想し、中長期のインフレ期待が上向きつつあることなどを挙げ、物価目標の達成に自信を示したそうです。

ダボス会議は、別名「賢人会議」とも呼ばれ、毎年1月にスイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会のことです。ダボス会議は世界を代表する政治家や実業家が一堂に会して討議するため、その発言内容が注目を集めています。今年は、トランプ大統領も参加して話題を集めています。

この会議で日銀総裁が発したコメントは大変重要であり、その意味は重いと思います。日銀は、日本経済長期停滞の元凶が、「上昇しないインフレ率」であるとし、2%の物価上昇を政策目標としてきました。この物価2%UPを至上命題として、なりふり構わぬ金融緩和政策を5年もの長期に渡って実施してきました。

日銀による公社債の買い入れ、株式の買い入れ、等々大量の資金を市場に投入してきました。

本来、国の中央銀行がこれらのリスクのある投資をすることは禁じ手と考えられてきました。しかし、従来流の考え方では現状を打破できないとの考えから、「黒田バズーカ」が放たれ続けられて来ました。また、それでも物価が一向に上昇しない為、究極の禁じ手である「マイナス金利」までも導入しました。

これにより、国内の預金金利は低下の一途を辿り、金利は、現状ほぼゼロに張り付いています。国内の金融機関は、本業である融資での儲けが出なくなり四苦八苦しています。現在、口座維持管理手数料を取る為の検討までも開始しているようです。通帳の発行手数料も取るかもしれません。背に腹は代えられない為だと思います。地銀などの地域金融機関の苦境は、本当に厳しいものであると想像できます。

黒田日銀総裁がインフレ率2%を目指して懸命に金融を緩和して5年が経ちますが、いまだにインフレ率は高まってきません。日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するとの方針でした。出口戦略は遥かな遠い将来のことだと思っている人が多かったのではないでしょうか。私も黒田総裁は当面出口戦略は実施しないと思っていました。

今回の一報の真偽や具体的な詳細情報はこれから明らかになると思いますが、出口戦略の検討開始が本当なら、これは日本経済にとって重大な転換点になるニュースです。次の日銀総裁の人事とも絡んで注目する必要があります。

但し、この出口戦略は、仮に実施するにしても、これまでの大量緩和政策の結果、大変な痛みを伴うことになります。どのように行うつもりなのかが、次の注目ポイントになります。

いきなり大量の資金を引き揚げることは、日銀自体のバランスシートが劣化してしまいますので難しいと思います。例は大変悪いですが、モルヒネ漬けの人からモルヒネを少しずつ減量していくような治療法で、徐々に正常化を行っていくのでしょうか。 しかし、逆にその苦しみは、ある程度の長期化が予想されることになります。

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