相次ぐ大型台風や大規模水害で保険会社の経営は大丈夫なのか

令和元年は台風15号や台風19号により東海、関東、東北地方の広い範囲に甚大な被害をもたらしました。家屋の水没や倒壊、屋根の破損による家財の水浸、多くの車の水没、農地やビニールハウス、果樹、農機具の水没による農業への甚大な被害、など数えきれない損害が発生しました。

これにより、2019年の損害保険金の支払額が1兆円を超える勢いであると損保大手3社から11月19日に発表されました。昨年の2018年は、「大阪北部地震」、「西日本豪雨」、「北海道地震」、「台風21号」、「台風24号」と災害が多発したため、1兆7,064億円の保険金支払が発生しており、過去最大となっています。今年の台風19号の保険金請求がこれからピークとなる為、今年もそれに迫る金額が予想されています。

大型台風の被害は、今後毎年、同程度かそれ以上の規模が見込まれるため、保険会社の経営は大丈夫かと心配になります。保険会社が経営危機になれば保険金の支払いが出来なくなります。万一の時に備えて保険料を納めていたのに、万一の時に役に立たないのでは洒落になりません。

保険会社は、そもそも「リスク」を材料に商売をする会社です。自然災害は大きなリスクです。しかし、保険会社はその「リスクをコントロール」して収益を上げることが目的の会社なのです。従って、自然災害の規模が大きいから会社が危なくなるというものではないのです。

それでは、保険会社はどのように災害リスクをコントロールしているのでしょうか。簡単に言えば「リスクの評価」「リスクの分散」により災害リスクをコントロールしています。

「リスクの評価」とは、災害の発生確率被害規模の予測です。最近のように自然災害の発生確率や被害規模が拡大していけば、当然、リスクの評価額は大きくなり、結果として、災害発生確率や被害規模予想の高い保険の保険料が値上げされます

最近は、AI技術を駆使して、より正確な災害の被害予想を行っています。年々その精度は向上しており、リスク評価の信頼性が向上しています。人工衛星の画像と土地の高さのデータを組み合わせて水害の発生地域を正確に予想することなどが一例になります。

「リスクの分散」とは、多くの方に保険に入っていただいて被害に遭われた方の損害をみんなでカバーするという考え方です。保険本来の「共助」の機能と言えます。ただ、実際の運用では、さらに保険の「再保険」という仕組みもリスク分散として活用されています。これは、別のより大きな保険会社に保険料を支払って、いざという時に備えるものです。いわば「保険の保険」です。イギリスのロイズ社が有名な再保険会社です。世界中の再保険を引き受けています。

また、日本の大手損害保険会社は、近年、海外の保険会社を多く買収しています。日本国内で災害が発生して収益が悪化しても、海外で同時に災害が多発しない限り、会社の収益は安定します。大手の会社では、欧米やアジア、アフリカなど全世界規模で事業を展開し「リスクの分散」を図っています。

今後、保険料の値上げはあると思いますが、「保険会社が倒産して保険金が払われなくなるかもしれないから保険に入らない」という考え方は、あまり賢い選択とは言えません。

むしろ、今後発生の増加が予想される自然災害に対して、保険を有効に活用した方が賢明と言えます。「保険料の値上げ」は辛いですが、値上げがあることこそが、正しく「リスクコントロール」されてい証でもあるからです。

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