今年は「南海トラフ地震」に要注意か

気象庁地震火山部から毎月定例で「南海トラフ地震に関連する情報(定例)」が発表されています。従来は東海地震に関連する調査情報として毎月発表されていましたが、平成29年11月より南海トラフ地震に関連する情報として発表されるようになりました。

この中で、最新の情報である平成30年12月の情報について少し気になる点がありました。発表の形式は従来よりずっと同じで、色々と観測データについての分析結果を記載していますが、結論部分はいつも決まって同じで、「現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。」となっていました。

ところが、今回(平成30年12月発表)は、本文中に(注)が初めて付きました。曰く、「現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。」

そして、(注)の説明として以下の説明が追加されました。「(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8からM9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70から80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。」

この「但し書き」ともとれる注の意味をどのように解釈すれば良いのでしょうか。確かに地震発生確率が70~80パーセントと高いので切迫していることは理解できますが、その状態が平常時の基準ですとわざわざ注釈する意図が知りたいと思います。

気象庁の発表データの形式は、上記結論部分の後に①「地震の観測情報」②「地殻変動の観測情報」③「地殻活動の評価」の3つの構成からなる説明情報が記載されています。

①の「地震の観測情報」については、東海地震情報のころはあまり記載は少なかったのですが、最近は「プレート境界付近を震源とする主な深部低周波地震(微動)を観測しました。」として発生地域の情報が記載されています。また、直近の発表では「11月2日に紀伊水道の深さ44kmを震源とするM5.4の地震が発生しました。」のような具体的な地震発生情報が続いています。

②の「地殻変動の観測情報」ついても、東海地震情報のころはあまり多くの記載はなかったのですが、最近は「①の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。また、同地域及びその周辺の傾斜データでも、わずかな地殻変動を観測しました。GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。2018年8月まで実施したGNSS・音響測距観測によると、紀伊水道沖の海底で2017年末頃からそれまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。」と情報内容が多くなっています。

③の「地殻活動の評価」についても記載内容が従来に比べて多くなってきています。平成30年12月発表分では、「…深部低周波地震(微動)と、ひずみ、傾斜、GNSSのデータに見られる変化は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。GNSS観測で観測されている2018年春頃からの九州北部の地殻変動は、日向灘北部のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。‥‥」

但し、結論部分は、前述のとおり「上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないと考えられます。」となっています。

気象庁の結論部分の判断結果については、一応、専門家の検討結果であり信頼性は高いと思いますが、過去の発表データを時系列で眺めてみると徐々に切迫感が増しているように感じられます。

最近は、政府を挙げて南海トラフ地震への防災への取り組みが活発化しています。南海トラフ地震の発生時パターンを東西に分けて「半割れ」のケース、「全割れ」のケース、それぞれについて避難対策の指針が発表されています。

普段から地震対策は必要だと思いますが、今後はより一層の警戒が必要な状況に近づきつつあるような気配がしています。各個人ベースでも必要な備蓄品を揃えるなど最低限の防災対策は行っておく必要があると思います。

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