親の相続について死角はありませんか。仲の良い親兄弟の一家もご注意を

親兄弟で普段から仲が良くコミュニケーションも十分とれている家族は多いと思います。このような一家の場合、父親等の遺産の相続について、あまり話題にすることもななく過ごしていることが多いと思います。親が亡くなったら残された相続人で話し合えば何とかなるだろうと漠然と考えている家庭が多いかと思います。

普通はそのまま問題もなく時が過ぎてゆき、父親等の他界の時も残された親兄弟で今後の話し合いが行われ、相続人全員の納得の形で遺産分割が行われます。特に問題は発生しないと思います。相続分の多寡により相続人の間で多少の不平不満は出るかもしれませんが、深刻なレベルではないと思います。

「うちは相続税を払うような財産もないはずだから相続について特に不安はない」と考えている方、本当に大丈夫でしょうか。そこには死角はありませんか。リスク対策を考えなくて良いでしょうか。

このような平和な一家で最も注意する必要があるのは、家族 (父、母、長男、長女、次男、次女等 ) の健康問題です。推定相続人の1人が病となり自分の意志を表明できなくなった場合、一気に問題が表面化します。

その後、親が亡くなり相続が発生した場合、遺産分割の為の話し合いが行われますが、どんなに仲の良い一家であっても自分の意志を表明できない方がいれば話し合いはできません。つまり、遺産分割協議ができないのです。

遺産分割協議ができないと相続手続は、その場でストップしてしまいます。相続財産が少ないと言っても多少の家作や預貯金はあるはずです。家屋の名義変更はできず、預貯金は凍結され解約や引出が出来なくなります。

人が意志を表明できなくなる場面は、色々な原因が考えられます。加齢による認知症の発症が多いとは思いますが、比較的若い方でも脳梗塞の発症など、事件事故等によって自分の意志を表明できなくなるリスクがあります。また、行方不明となるケースは稀だと思いますが、強度の鬱(うつ)症状の場合も同じ状況になる恐れがあります。

                     

1人くらい欠けても残された相続人で平等に分割すれば良いのではないかとお考えの方もあるかもしれません。脳梗塞の兄には、相応の分配を行っておけば問題ないのではと思われるかもしれません。

しかし、法はそれを許していません。遺産の分割は相続人の全員一致が必要なのです。

実は、このような状況の中での問題解決の為の相談が、最近の相続問題の相談で多くなっています。必要な対応策は、法律の専門家に相談されれば色々ありますが、それぞれ相当な時間と費用が掛かってしまいます。

相続問題に潜むリスク対策は、税金対策だけではありません。ごく普通の家族が、突然発生した相続問題の難問に立ち向かわなければならなくなる場合があります。

そうならない為には、事前の準備と対策が最も有効だと思います。相続が発生する前であれば、たとえ発病や事件事故の発生後でも対応は可能となるはずです。色々な方法を研究されることをお勧めします。遺言、生前贈与、死因贈与、民事信託など最近は色々なスキームがありますが、「遺言」が最もシンプルで簡単だと思います。

相続法の大改正も平成30年7月に成立しています。遺言についても、より使い勝手の良い仕組みに色々と改善がなされています。施行日の関係で今すぐ実現できないものもありますが、よく研究されて活用されても良いと思います。

転ばぬ先の杖ではありませんが、相続問題で不幸になってはいけません。仲の良い親兄弟だからと言って決して安心していてはいけません。

 

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