東海道新幹線の安全対策は、本格議論の時期になりそうです。

ついに東海道新幹線の車内で他人への殺傷事件が発生しました。いつかは起きると思っていましたが、遂に最悪の事態が起きてしまいました。

神奈川県内を走行中の東海道新幹線内で6月9日夜、乗客の男女3人が男に刃物で殺傷されてしまいました。見ず知らずの若い女性に対し刃物で切り付け、これを止めに入った男性客が逆に切り付けられ死亡してしまいました。

当日の新幹線の車内には、横浜市の日産スタジアムで行われた韓国の人気デュオ「東方神起」の公演の観客が多数乗車していたとみられます。車内にはこの日の公演に訪れ、東方神起のタオルなどのグッズを手にした若い女性が多数乗っていたとのことです。

事件が起きた新幹線は東京発新大阪行きのぞみ265号で、新大阪行きの最終列車でした。この日の公演は午後5時開演で、名古屋・関西方面から訪れ、終演後に最終列車に乗った人が多数いたとみられます。

犯人の若い男性は、12号車のD席に乗車していて隣のE席の女性に突然切りつけたようです。犯行理由は、「むしゃくしゃしていたから誰でも良かった。」との理由です。

東海道新幹線では、2015年6月30日に公的扶助の在り方に憤りを覚えたシニアの男性客が、1号車の先頭車両で頭からガソリンを被って焼身自殺した事件がありました。この事件は、東海道新幹線開通以来初めての乗客の殺傷事件となり、新幹線の安全神話が崩れた事件でした。

この事件でも、近くにいた女性が、まきこまれて亡くなっています。自殺を図った男性は、ガソリンの入ったポリタンクをリックに入れて乗車し、焼身自殺を図っています。

この事件を受けJR東海では、新幹線各車両にに監視カメラの設置を決め、安全対策の強化を行いました。

今回の事件は、刃物を使った無差別殺人であり、前回の事件と比べて、リスクのレベルがもう1段上がったものと思われます。今後さらに、リスクレベルが上がれば、まさに集団殺戮を目的としたテロ行為も視野に入れざるを得ないと思います。

私自身も新幹線は、仕事の都合で2,000回近く乗っていますので、安全対策は極めて身近な問題です。監査カメラの設置は、抑止力の点で一定の効果は期待できますが、確信犯に対しては無力だと思います。本格的な対策としては、乗車前の手荷物検査や金属探知機などによるセキュリティチェックが考えられます。

日本を除く欧米や中国等、現在では多くの国で高速鉄道への乗車に対して、手荷物検査や金属探知機による検査が実施されています。たとえば、ヨーロッパのユーロスターの一部区間では、X線 手荷物検査と金属探知ゲートによる検査が実施されています。中国でも新幹線は、X線手荷物検査と金属探知ゲートによる検査があります。

 

ヨーロッパや中国では、テロ行為等も一部発生していますので、検査に係る待ち時間も乗客はある程度は甘受できると思います。

一方、日本では、テロ行為は幸い発生していませんし、新幹線での刃傷事件も今までは発生していませんでした。また、東海道山陽新幹線の1日の輸送人員は、658,200人とまさに桁外れの輸送人員です。このような状況で手荷物検査を逐一実施することは、多くの乗客の納得が得られないと思われます。

しかし、今回の事件の発生で、安全対策の強化の議論は避けられないと思います。2020年には、東京オリンピックも開催され大勢の外国人も乗車するようになります。今から議論を進めて、少しでも有効な対策を検討し実行していく必要があるのではないでしょうか。

個人的には、手荷物検査はかなり難しいと思います。乗車時刻に相当余裕を持ってスケジュールを立てる必要があり、臨機応変に動かなければならないサラリーマンには、かなり難しい状況になることが予想されます。

X線などによる金属探知機、例えば、ゲートをくぐる方式のものであれば、許容できるのではないかと思います。但し、ラッシュの時間帯など大量の乗客を処理するには、特別の工夫や手立てが必要だと思います。

武器を携帯した鉄道公安官の列車内の常駐化も検討に値するかもしれません。

いずれにしても、新幹線車内は密閉された高速移動空間であり、ある意味で航空機の機内と同じ状況であるともいえますので、同程度のセキュリティ対策がいずれ必要になると思います。当面は、実施可能な対策を積み上げていく他はないと思います。将来的には、顔認証システム等の安全対策用のテクノロジーの進歩に期待したいと思います。

 

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