「婚姻前契約」をするカップルが増えているみたいです

「婚姻前契約」とは、耳慣れない言葉ですが、この契約を結んで結婚するカップルが少しづつではありますが、増えているようです。婚姻前契約とは、法律的に定義されたものはありませんが、カップルが結婚する前に今後の夫婦生活の色々な事柄を事前に取り決めて、その内容を契約書にしておこうというものです。

「えっ、そんなことする人いるの?」とお考えの方は、時代の流れに少し疎くなっているかもしれません。具体的な契約内容としては、千差万別で当人同士で自由に決めれは良いのですが、大まかに言えば2つの内容に分類できます。

1つは、結婚生活におけるお金の取り決めです。生活費はどちらが主に出すか。不動産など購入した場合の名義はどうするか。夫婦で貯めたお金の名義はどうするか。各人が結婚前から持っていた財産の扱いはどうするか。生命保険に入るかどうか。などなど色々あります。

もう1つは、結婚生活における今後の計画や生活のルールです。子供はどうするか。家は持家か賃貸か。持家の場合いつ頃購入するか。両親の面倒はどうするか。等々。生活のルールとして、お互いの誕生日はお祝いをするとか、大きな買い物をする時はお互い相談の上行うとか、帰りが遅くなる時は必ず連絡を入れるとか、考えればきりがありませんが、カップルでよく話し合って決めていきます。

 

過激(?)なものでは、離婚した場合に備えて、慰謝料の金額や財産分与の方針まで取り決めておく場合もあります。結婚前の最も楽しい時に、冷静に今後の夫婦生活について契約内容として取り決めておくのです。

実は、あまり知られていないですが、民法にもこれと似た制度が用意されています。「夫婦財産契約」といいます。「夫婦は、契約によって婚姻中の夫婦の財産関係を自由に定めることができる。」(民法755条) と定めています。しかし、わが国では、従来から婚姻前に契約を結ぶ慣行がないことからこの契約を締結することは殆んどありませんでした。

また、「夫婦財産契約」は結婚する前に締結し、かつ、その効力を第三者に対抗するには、契約内容の登記をしなければなりませんので、手続き的な面倒さからこの制度を利用する夫婦は殆んどありませんでした。

今回、この「夫婦財産契約」制度と似て非なる「婚姻前契約」が登場した背景は何なのでしょうか。次のような理由が言われています。
① 婚姻年齢が高くなっているので、ある程度冷静に結婚生活を考えることが出来る人が増えている。
② 最近の権利意識の高まり。
③ 女性の権利意識の向上。
④ 離婚の増加と再婚者の増加。

カップルが結婚生活を見据えて今後の人生設計をしっかりと話し合いをして、その結果を契約書という形で残しておくという発想は悪いことではないと思います。むしろよく話し合うべきだとも思います。但し、契約書までしたためるのはどうかと考える方は多いとは思います。

婚姻前契約は、通常、公正証書で作成することが多いと思いますが、そこまでしなくても単なる契約書面 (私署証書) だけでも良いとは思います。仮に、公正証書で作成しても契約内容全てについて、法的効力が生じることはないと思います。財産関係の一部の契約は法的効力を持つ場合があると思いますが、生活ルールなどは法的拘束力までは難しいと思います。

なお、これもあまり知られていないと思いますが、民法では夫婦間の契約は自由に取り消すことが出来ます。「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。」(民法754条) 要するに、婚姻中に夫婦間で取り決めた約束事は、夫婦間の問題として、事実上、法的効力を認めないという意味だと思います。法的に訴えられた場合、取り消せば良いのですから。

この規定がある為、結婚の前にこのような契約書を作る意味があることにもなります。契約書は、婚姻前に作らなければ、取り消しが可能となるのです。

ところで、最近は熟年カップルが増えています。高齢者同士のカップルの場合、双方が離婚や死別を経験している場合、結婚まですることはお互いの相続問題が絡んで来る為難しくなっています。その為、事実婚のケースが多いと思いますが、この場合もカップルの間で契約書を作成しておく場合が見られます。

正式の夫婦ではないため、法的な関係性が十分でなく、種々の不都合が生じる為、これを少しでも回避する為のツールとして活用されています。例えば、一方が病気で入院した場合、他方に病状の開示は出来ませんし、手術の同意をすることもできません。公正証書による契約書により予め双方でそのような場合の事前同意を契約しておけば、病院によっては夫婦と同じ扱いに応じて貰える場合があると思います。

夫婦の形態には、色々な形があるかと思います。以前、若い夫婦の奥様から将来の離婚時に備えて夫名義のマンションを夫婦で共有にしたいがどのようにすれば良いかと相談を受けたことがあります。その時、奥様に現在の夫婦仲を確認したところ、大変良好であるとの返答を頂き少し驚いた経験があります。

夫婦の関係も時代とともに大きく変容していると思います。これからも色々な考え方や夫婦のスタイルが登場してくると思いますが、基本は夫婦間のお互いの気持ちを大切にすることだと思います。

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