高血圧の基準が、また変更になるようです

来春から高血圧の基準となる血圧の範囲が変更になるようです。噂では、上は130以上は高血圧となるみたいです。最近、テレビのCMで「血圧130超えたら〇〇麦茶」というのをよく目にしますが、この前哨戦でしょうか。

ひと昔前までは上の血圧は「年齢+90」が目安と言われていました。50才なら140までが正常範囲。60才なら150までが正常であると。長らくこれが一つの基準でしたが、目安では心もとないと感じたのか、1987年に旧厚生省が「180/100」という診断基準を策定しました。この数値の医学的な根拠は良く分かりませんが、何かはあったのでしょう。この頃は、高血圧に対しても寛容な時代でした。この時代がそれから13年ほど続きます。

これに対して、2000年に日本高血圧学会が、「140/90」という、従来に比して大変厳しい基準を打ち出しました。恐らく、高血圧を起因とする疾病が世の中に広く認識されるようになって、疾病予防の見地から、海外の研究成果も踏まえて新基準が提唱されたのではないでしょうか。このときは、年齢ごとに治療目標が定められ、70代は150以上が治療開始、80代は160以上が治療開始の基準とされました。

これが、現在、広く世の中に知られている高血圧の判断基準ではないかと思います。140越えが高血圧の目安ということになっていると思います。

この基準が来春以降130超えに変更されるという話の展開です。中高年の大半が高血圧患者または予備軍になるような気配です。本当に良いのでしょうか。少し懐疑的な気持ちになります。

過去にも日本人間ドック学会による、実際の健康診断結果データから見た血圧範囲が示されており、それによれば「147/94」が正常範囲とされています。

2014年4月、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会では、共同研究事業を立ち上げ、約150万人に及ぶ人間ドック検診受診者の検診データについて肥満度、血圧、脂質、血糖値等の検査値を受診者毎に蓄積し、メガスダディーによる新たな検査値の基準範囲を策定しました。今で言うビックデータによる解析事業です。

策定された検査の基準範囲は、血圧、BMI、血糖、コレステロール、AST、クレアチニン、尿酸などの検診基本検査の27項目です。基準範囲の設定は、国際的に認知されている米国CLSI基準に準拠して科学的に分析評価を行って実施されています。そこに公表されている基準範囲は、概ね、現在の検査基準よりも「緩い」ものが多く示されています。「緩い」とは、多くの方が正常の範囲に入り易いという意味です。

研究成果の発表の中で本研究の特長として、次のように書かれています。「特長の1つは、……人間ドック検診施設機能評価認定200施設(以下認定施設)より、人間ドック検診受診者約150万人の人間ドック検診データを集積して、臨床検査項目ごとのデータおよびその分布等を解析する事である。」「つまり、このような大規模調査による基準範囲の策定は今までになく、エビデンスレベルの非常に高いデータとなる。」「また、十分なデータ数を用いて性別、年齢階層別などの詳細な臨床検査の基準範囲を作成する事により現存する基準範囲とは異なる男女別、年齢別の基準範囲の策定が可能である」

なお、血圧値に関しては、男女や年齢階層別の基準ではなく、一律「147/94」です。
他の基準値は、男女別や年齢別の基準となっているものが多いです。

因みに、他の基準範囲は、次のようになっています。(ごく一部ですが)
クレアチニン 男性上限 1.08  女性上限 0.82
尿酸     男性上限 7.9    女性上限 5.9
γ-GTP      男性上限 84   女性上限 40
空腹時血糖  男性上限 114   女性上限 106
‥‥‥‥

医学のことは全くの素人ですが、ビックデータを活用した人間ドック学会の基準値の方が信頼性が高いような気がします。

人間ドック学会の基準値が世の中に浸透しないのは、色々な大人の事情があるとは思います。そのような「緩い」基準が世に出ては困る方々が多いのかもしれません。

しかし、それは言わないこととして、医療機関は、我々国民の健康長寿を真に願って、新しい基準値を策定していると信じていきたいと思います。

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