車の自動運転技術に急ブレーキの恐れ。

米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズの自動運転車が、現地時間の3月18日夜、米西部アリゾナ州での走行試験中、歩行者をはねる事故を起こしました。

事故は夜10時ごろに発生しました。アリゾナ州フェニックス近郊の4車線道路の横断歩道でない場所を自転車を引きながら渡っていた女性(49)が、夜間走行試験中の自動運転車にはねられたのことです。女性は病院に搬送された後、死亡が確認されました。

事故当時、車は通常の速度で自動運転されていましたが、緊急事態対応用に操作員が運転席に乗車していたという報道です。操作員も緊急回避できなかった模様です。

自動運転での実験中の事故は、これまでも発生しています。米電気自動車メーカー、テスラの自動運転車が2016年5月、南部フロリダ州で事故を起こし、同乗していた操作員が死亡しています。原因は、強い日差しを車が受け、対向車を認識できずに衝突してしまったということです。これ以外にも軽微な事故は、結構発生しているようです。

しかし、今回の事故は、歩行者をはねて死亡させた事故の為、その意味が従来の事故と違っています。自動運転技術の目的は、対歩行者への安全性が最大ポイントになる為、この部分の事故は、自動運転技術の開発にとって致命的な問題となり得ます。

アメリカでは、事故が起きたアリゾナ州を含め複数の州は、自動運転の関連メーカーを誘致するため、競うように規制を緩和して公道試験を認めてきたようです。そういう意味で早急な実験拡大の結果、事故が発生したのかもしれません。

アメリカの運輸当局も事故調査に乗り出しており、従来よりあった、自動運転の性急な公道実験の反対論に火をつける恐れがあります。これにより、自動運転技術の実験が大幅に遅れ、技術の実用化の遅れが発生する可能性が高まるかもしれません。

日本では、トヨタ自動車が、昨年の12月5日、愛知県の幸田町で公道による自動運転実験を開始しています。日本の場合は、比較的慎重に実験を行っていますが、公道での無人自動運転技術の実験は初めてのものです。

車は人が運転に全く関与しない「レベル4」といわれる自動運転車を使用します。3次元の地図を頼りにカメラやセンサーなどで走行地点を把握し、車体からレーザーを照射し、周囲の様子を360度検知する仕組み「LiDAR」システムで、周辺状況を確認しながらハンドルやブレーキなどを自動制御する仕組みです。

実験は約700メートルの周回コースを時速15キロ以下で走る設定でした。一般車両も通行できる公道で交通規制しないで実験するため、事故が起こりそうな場合は遠隔操作でブレーキをかけられるようにしているほか、助手席の補助者も緊急停車できるようにしています。使用する車種は、トヨタの「エスティマ」をベースとした車です。

トヨタは、2016年に今回事故を起こしたウーバーと自動運転技術で協力し、出資もしています。今回のウーバーの事故は、トヨタにとっても影響が大きいと思われます。

今回の事故は、女性が暗闇から姿を急に現したため、アメリカのメディアは、人間の運転手でも事故を避けるのは難しい状況だったとの見方を伝えています。ただ、自動車業界では「自動運転は人間の運転より何倍も安全でないと社会に受け入れられない」との見方が多いのも確かです。

新しい技術の開発には、時として犠牲が出る場合もあると思います。しかし、過去の技術革新は、これらの困難を乗り越えて発展してきたと思います。これから加速度的に高齢化が進む我が国にとっては、車の自動運転技術は、高齢ドライバーによる事故の多発問題の対策としても、何としても早急に確立したい先端技術です。

日本の自動車メーカー各社や世界中の自動車メーカー、またIT企業を中心に新たに自動運転技術の開発に参入する企業も含めて、激しい開発競争が今後とも繰り広げられると思います。 そんな中でも、各社は安全性の確保を最大の目標として、品質を固めながら一歩一歩、着実に前進してもらいたいと思います。

 

 

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